持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2010-01-01から1年間の記事一覧

伝えあう力

国語教育と英語教育 今日のタイトルは国語科の学習指導要領で登場する言葉である。類似の概念を外国語科では「実践的コミュニケーション能力」と呼ぶ。このような用語の違いのように、国語教育と英語教育では、さまざまなところで問題意識の共有を妨げる要因…

ゼミ発表資料

2010年6月11日にゼミで発表した資料を転載します*1。前回の発表で文献の読みが浅かったところを読み直しているため、内容に重複するところがあります。 メタ言語能力の概念 メタ言語能力の定義 メタ言語能力(metalinguistic abilities)の定義を簡略化して…

発表に追われるの怪

何が困るのか 院生の間で発表が近くなると「大変、大変」と大騒ぎになる。何が大変なのだろうか。学会発表なんかじゃない。内輪のゼミの発表である。修士論文の提出期限から逆算すれば、一定の周期でゼミの発表があるのは当然で、その逆算されたスケジュール…

ゼミ発表資料(その2)

2010年5月7日にゼミで発表したレジュメを転載いたします。 メタ言語能力 メタ言語能力と外国語学習 メタ言語能力と外国語学習との関係としては、2つの仮説を考えることができる。ひとつは「メタ言語能力が外国語学習を促進する」で、もうひとつは「外国語学…

ゼミ発表資料(その1)

2010年5月7日にゼミで発表したレジュメを転載いたします。 メタ言語能力 メタ言語能力とは何か メタ言語能力(metalinguistic abilities)*1とは、人間の脳内に内蔵されている言語知識を客体化して利用できる能力である(大津1982, 1989)。この概念を指す用…

読解と作文法

高1・高2の「予備校の英語」 現在出講する予備校では、高1と高2の中上級クラスでは英文読解と英作文法の教材が配当されている。標準的な時間配分は週あたり前者に50分2コマ、後者に50分1コマとなっている。このうち、私が重視するのは英作文法のほ…

ゼミのこと

学部時代 ゼミというのは、担当教員の方針によってさまざまな文化を持つ空間である。学部時代のゼミは、時間を気にせずに議論をしていこうという方針*1で、4限開始時刻である15:00から始まり、終わりは20:00以降、というのが当然であった。ゼミ生一人一人の…

派閥?

指導原理を求めるあまり・・・ 国語教育の世界は英語教育の世界以上にこわいと思った。何やら派閥のようなものがある感じだ。英語教育の世界にもそれらしいものはある。だが、国語教育のほうがその傾向が強い気がする。これは国語という教科が、何をどのよう…

通学の日々

点と線がつながらない 自宅から大学までは徒歩で10分強。キャンパスの北門から入り、主に14号館と16号館で授業を受けている。授業後に仕事があって東西線早稲田駅に向かうとき以外、キャンパスの中心部を貫通することはめったにない。極めて狭いエリアでこそ…

おいでよ、千葉・津田沼・柏に!

英作文法 今日今年度の授業で使用する教材一式を受け取り、一通り目を通した。そして考えたこと。高1高2の英作文法のテキストは日英語の対比を軸に導入していく。そして日英語で違うところについてはどう違うのかを生徒に納得してもらえるように配慮する。…

文型における日英語の接点

動詞の図式構成機能 田中・深谷(1998)は、動詞が事態を構成する対象に役割を割り振り、事態の図式としてとりまとめる働きのことを「図式構成機能」と呼んでいる。ここでいう「図式」とは認知言語学で言われる「命題スキーマ」に相当し、「事態を構成する対象…

【再掲】学習文法における文型論

今回は和文英訳のための日本語文法を考えるために、このブログで2008年4月に掲載した文型論を再掲することにします。 文型研究の3つの観点 日本語の文型研究は、次の3つの観点があると言われている。 表現意図による文型 語の用法に関する文型 文の構造に…

和文英訳再考(その3)

生徒の感じる「もどかしさ」 吉田・柳瀬(2003)はコミュニカティブ・アプローチにおける効果的な日本語の活用について述べている。このなかで、スピーキングやライティングで生徒がどのようなもどかしさを感じるかについての研究に触れられている。これは高校…

和文英訳再考(その2)

和文英訳の利点 和文英訳にも利点がある。まずは消極的な利点から挙げていく。中尾(1991)はクラスの生徒数が10〜15人程度までであれば自由英作文の授業が可能であり、それを超えるクラスサイズでは教師の添削の負担が大きく現実的でないことを指摘している。…

和文英訳再考(その1)

和文英訳批判 英語が書けるようになるために和文英訳が有害であるとの主張をよく目にする。松本(1965)では、和文英訳の弊害について、日本文を分析した結果をそのまま逐語訳として一対一で英語に置き換えることで英語の語義や語法を無視した英文ができてしま…

4月からのブロギング・ポリシー

「院生日記」と研究状況 4月から大学院に通うことに伴って、このブログでも院生日記的な内容を書く日を設けようと考えています。授業で学んだことをレビューすることはもちろん、修士論文に向けた研究の話から、他の院生とのやり取りの中で感じたまで、さま…

解釈学的国語教育

「解釈学」とは何か 日本の国語教育において解釈学的思潮が隆盛を極めた時期がある。輿水(1958)によると、昭和初期から終戦までの時期がそれにあたる。「解釈学」とは元来は古い文書をいかに解釈するかを研究する学問であった。この文献解釈の方法には「文法…

外国語学習のための時間とお金

ただでは身につかない 外国語に限ったことではないかもしれないが、学習にはお金と時間が必要である。大学生活にしてもそうで、親に学費を負担してもらった学部時代よりも、昨年4月から自腹で履修している大学院の授業のほうがモチベーションが高いのも事実…

カテゴリー休止なう。

この3月で高校の非常勤を辞める。勤務はすでに終了しており、昨日さいたま市内で学校主催の納め会に出席し、先生方へのご挨拶も済ませてきた。一昨年の6月からというイレギュラーな勤務開始であったが、最後は「普通に」終えることができた。 受験対策に特…

うそっぽい学力

テストが大事? 「テストに出ますか?」と生徒に聞かれたら、「知るかボケ!」と返したいのが本音である。テストがそんなに大事なのだろうか。もともと勉強する気がないなら高校なんか来なければいいのにと思う。定期試験というのは普通に授業を受けていれば…

予備校生と大学生

どちらが忙しいか 非常勤先の高校で卒業式があり、浪人が決まった卒業生とも話をした。そこで私はその生徒に「浪人中というのは案外時間がある」ということを話した。大学に入ってからのほうが暇じゃないかという意見もあろうが、現実にはそうでもないと思う…

ご報告

4月からのこと すでにこのブログでも断片的に触れているのでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、今年の4月から大学院に通うことになりました。早稲田大学大学院教育学研究科国語教育専攻の修士課程に籍を置きます。大まかに言うと、外国語学習の…

ことばを知り、ことばを身に付け、ことばを使う

言語学習の基礎 言語学習の基礎は、ことばを知り、ことばを身に付け、ことばを使うことに尽きるのではないか。最近特にそう思うようになった。言語技術を身に付けさせることを言語教育の目標に位置づけるべきだと思う。だが、その基礎となるのがことばそのも…

漢字と漢文と漢和辞典

漢字本を読む 最近、非常勤先の高校での空き時間を利用していろいろと本を読んだり、ラテン語や中国語の学習をしたりしている。そんな状況で漢字・漢文に関する本を読んだりすることがある。最近読んだのは次の3冊である。漢字の過去と未来 (1982年) (岩波…

路線変更ではないが・・・

激しくつぶやく場としてのブログ 本来このブログは、英語教育・国語教育を応用言語学の視点で切り込み、その思考の断片を私が覚え書きとして書き付けることを目的としている。だが、あまりに断片的すぎて専門的なエントリーたり得ないものがあったり、忙しく…

漢文のその後など

漢文の基礎を学び直して気付いたこと 先日から、『古典漢文の基礎』(山本哲夫著、洛陽社)を少しずつ読んでいるが、冒頭部分がなかなか興味深い。漢字・漢語の基礎知識として、六書に触れ、書体の変遷にも触れ、次いで熟語の成り立ち、呉音・漢音・唐宋音に…

勉強は20歳になってから

己の体験を語れるか 予備校で教えていると、自分の受験生時代を振り返り自らの体験を語る講師が多いことに気づく。だが、ロクに受験勉強をやっていない私にとっては、語るべきものがない。予備校には通っていたし、授業もそれなりに受けていた。英語の授業で…

語源のことなど

どこまで必要なのか 英単語は語源を手がかりに覚えるとよいなどと言われる。だが実際どうだろうか。少なくとも、初学者向けの学習法ではない。小学生や中学生がdogやcatの語源の知識がなければこれらの語彙が身につかないなんていうことはありえない。大人は…

言語学習のその後

MDウォークマンの活躍 最近はNHKの語学講座で勉強しようとする場合、「トークマスタースリム レッド RIR-900RT」のようなものを利用する人も多い。だが、私はとりあえず自宅にある機材を有効活用と考えた。そこで白羽の矢が立ったのがHi-MDウォークマン…

時代は変わる

メディアの変遷 学部時代、ラジオの「やさしいビジネス英語」や教育テレビの「英語会話II」などを録音して聴いていた。だが録音に使うメディアはカセットテープで20分の放送を46分テープに入れると2回分の放送しか入らなかった。80分のテープなら4…