持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

学習文法における、意味理解のための表示レベル

訳読の弊害を取り除く仕組み 英語学習、とりわけ読解学習では、母語である日本語に訳すという作業が現在でも行われることが多い。特に初学者がある程度の難度の英文を読む場合はこの過程は避けられないと思われる。しかし、訳読では英語表現を日本語表現に置…

国際コミュニケーションのための英語って?

国際コミュニケーションとは何か 岡部(1987)は、コミュニケーションをそのレベルに基づいて類型化している。それによると、コミュニケーションはまず社会レベルと個人レベルに大別される。社会コミュニケーションはさらに集団、組織、国家、文化というレベル…

学習文法における変形

変形理論の折衷と統語構造のネットワーク化 原口・鷲尾(1988)は、Harrisの変形(変換)とChomskyの変形の最大の違いは、Harrisの変形が文と文とのあいだの対応関係を扱うのに対し、Chomskyの変形は抽象的な構造(深層構造)を別の構造(表層構造)に写像する…

生成文法の諸概念と読解文法

ご案内 これも発表予定だったハンドアウトの続きです。 核文 核文(kernel sentence)とは初期理論における概念であり、句構造規則によって生成された終端記号列(terminal strings)に義務変形を適用することで得られる文である(Chomsky1957)。義務変形と…

読解文法から見た生成文法

ご案内 発表予定だったハンドアウトの続きです。 言語能力と言語運用 生成文法は言語能力のモデルを提案する理論である。言語能力モデルである生成文法のモデルを、そのまま文理解や文生成のモデルと見なすことには問題がある(坂本1995)。したがって、生成…

生成文法の知見を読解文法に援用することの有効性

ご案内 この記事は、10月28日に行われる予定でした阿部一英語総合研究所の研究会で発表する予定で制作していたハンドアウトの一部です。研究会は来月に延期になりましたが、せっかくのハンドアウトをひと月も塩漬けにしておくのももったいないので、ここ…

応用言語学としての受験英語⑤

訳読からリーディングへ 訳読は本当に訳読だったのか? 文法訳読法は英語ではGrammar Translation Methodという。translationには「翻訳」という訳語が当てられることもある。 松本(1993)はリーディングを「送信者が文字に託したメッセージを受信者がいかに…

応用言語学としての受験英語④

コミュニケーション能力と学習文法 コミュニケーション能力 Chomsky(1965)は理想化された言語使用者の言語知識を「言語能力」(linguistic competence)と定義している。この言語能力の概念は、先に取り上げたコミュニケーションの概念と照らし合わせてみれ…

応用言語学としての受験英語③

言語習得と記号としての文法 言語習得のメカニズムと文法体系 言語習得は言語形式と意味/機能とのマッピングであると捉えられる。この考え方は決して目新しいものではない。ソシュールの理論を概観するなかで丸山(1981: 83)は、ラングについて「母国語であ…

応用言語学としての受験英語②

学習過程モデルにおける学習文法の位置づけ 学習過程から学習文法を捉える意義 従来の文法指導ではリスト化された知識の羅列として文法が扱われてきた。これはあくまでもリストであり、辞書のように引いて参照するための文法としてはよいが、学習者が学習す…

応用言語学としての受験英語①

ご案内 今日から何回かにわたって、先日行われた阿部一英語総合研究所の勉強会における研究発表のハンドアウトを掲載していきます。 はじめに 従来、日本の英語教育で教えられている「英語」には、「受験英語」「学校英語」「英会話」の3つがあった。最近で…