持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

実録・大学受験の読解指導

構文派とパラリー派の狭間で私の選択 前にも書きましたが、私は受験英語における「構文派」と「パラリー派」という対立軸そのものがおかしいと考えています。日本人が母語である日本語とは体系を著しく異にする英語で文章を読もうとする場合、語順を中心とし…

久々の大学受験指導

今年度は、久しぶりに大学受験指導の仕事もやっている。「久しぶり」というのは、実は語弊がある。というのも、大学受験の対策をまったくやっていなかったのは昨年度だけで、細々とは続けていた。しかしシラバスから教材まで任されての仕事は久しぶりなので…

フレーズからチャンクへ

「フレーズ」について 「フレーズ」とは、英語でphraseと綴り、日本語では「句」と訳される。しかし、ここであえて「句」という用語を使わなかったのは、「句」という語が定義が曖昧なまま用いられることが多いからである。以下では、荒木・安井(編)(1992)を…

構文からフレーズへ(続き)

伊藤・山口による英文構造の体系的提示の試み 山口(1997)によれば、伊藤*1と山口は英文読解の基盤を構築する共同作業の中で、それまで品詞論と熟語的な表現が根幹をなしていた英文解釈法を改め、文構造の体系的な提示による一貫性のある方法を確立していった…

『英文解釈教室』の批判的検討―構文からフレーズへ

主語と述語動詞の把握 『英文解釈教室』(以下、伊藤(1997))では、英文を形から考えていく上で始めに行うことは、何が主語で何が述語動詞であるかを確認することであると述べられている。そして主語の把握にあたっては、「文にはじめて出てくる、前置詞のつ…

伊藤和夫 再考②

伊藤の読解文法 山口(1997)によると、伊藤は英語の文構造の分析と解明をしていく上で、Sweet, Jespersen, Poutsma, Curmeなどの専門書に当たっていたという。このことを裏付ける記述がある。 文中の1部を強調のためにIt is ... thatではさんで文頭に出すこ…

整序問題の参考書

この本は30年以上前に書かれた受験参考書である。しかし大学入試の整序問題の参考書としては、今でも十分に使えるものである。 ただし、文体が硬いし、表現も難解である。このため今の大学受験生に読みこなせるか、と考えたら難しいかもしれない。それでも本…

伊藤和夫 再考①

構文主義の成立過程 一般に「伊藤和夫」というと『英文解釈教室』のイメージが強く、英語を構文という視点から分析して解読していく「構文主義」の予備校講師と見られている。そしてこの「構文主義」の是非を巡る議論がいまだに絶えない。本稿では「構文主義…

国語教育における「読解」

PISAの「読解」と国語の「読解」との齟齬 経済協力開発機構(OECD)が2003年に行った「生徒の学習到達度調査(PISA)」によると、日本の高校生の読解力はOECD平均と同水準にとどまっている。平均というと悪くはないという印象を持たれるかも…

「コアイメージ」の理論と実践の書

NHKの「新感覚☆キーワードで英会話」や『Eゲイト英和辞典』(ベネッセ)で用いられている「コア」や『発想の英文法』(アルク)『チャンク英文法』(コスモピア)で用いられている「チャンク」という概念の理論的背景と、指導上の示唆を扱ったのが本書で…

チャンキング・メソッドとリーディング

チャンクとチャンキング 深谷・田中(1996)は、コミュニケーションの流れの中でのコトバ*1は、その流れの中で使用される断片が配列されたものと捉えている。より一般的な言い方をするならば、コミュニケーションにおける言語表現・言語理解の単位は「文」では…