持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

暗黙知

言語研究者と実務家の隔たり 現在、通翻訳や国際取引業務などに携わる人の多くは、その英語力の基盤をいわゆる規範文法を学習することで築いている。こうした人たちは理論言語学者の言語観に対して批判的であることが多い。たしかに、生成文法では、その研究…

コミュニケーション・思考・言語

教育再生会議の第一次報告を踏まえて 1月24日に内容が明らかにされた、教育再生会議の第一次報告「社会総がかりで教育再生を〜公教育再生への第一歩〜」には、今後の検討課題として、言語教育に関わる項目が挙がっている。 小学校における英語教育の在り…

はぁ?

妙な対立図式は続く このブログを始めた頃、英語教育の世界に妙な対立図式があるということに触れた*1。しかし、この構図は根強いし、しかも当事者たちの自覚が希薄である。コミュニケーションを教えるから文法は教えない。コミュニケーションなんて軽薄なも…

日本語の文構造における主語の位置づけ

「終止・連体形」の働き 現代日本語の終止形について、中島(1987)は本来の連体形に吸収されたものであると主張し、「終止・連体形」と呼んでいる。つまり、日本語の文は本来連体形で終わっていて、文自体が名詞的な性格を持つというのが、中島の主張である。…

日本語における主語

英文法との関連 明示的な英文法学習において、母語である日本語の語順との違いを意識することは重要である。寺島(1986)は、学習者の日本語学力が低いと単純なS+V+Oの文を和訳することができないため、英語の語順が「名詞+動詞+名詞」であるのに対して日本…

日英語の語順

OV言語とVO言語という類型化 Whitman(1998)や岡田(2001)など、日英語の語順を分析した研究では、日本語と英語の語順の違いを「主要部パラメータ」(head parameter)の値の違いとして捉えるところから出発することが多い。この場合、日本語が「主要部末尾型…

なぜ基礎から逃れるのか

『考える英文法』と『英文法教室』 本書は、高等学校二三年生以上の学生、その他英語に興味を持つ一般の人々を対象に書かれたものである。 これらの方々は、相当程度英語の読解力を持ち、また、かなりの英文法の知識を持ち合わせている。(吉川1976:3) 本書…

文型論についての補遺(続き)

文型論の扱う基本文型 学習文法において、文型論は基本文型を扱う。このことは自明のように思われるが、基本文型と基本でない文型を分ける規準は曖昧であることが多い。小笠原(1964)は文の義務的な成分の組み合わせのみで成り立つ文というのが、基本文型の一…

文型論についての補遺

5文型保持派の主張 以前、「文型論の変遷①」で5文型の問題点について取り上げたが、5文型を保持する立場の主張について補足しておきたい。この主張は2点に集約される。1つは英語の構造を説明するのに都合がよいということ、もう1つは記述が単純である…

格文法の英語教育への応用

日英語の異同の提示 Fillmoreが1960年代に提唱した格文法(Case Grammar)の特徴は、文の主語を目的語などよりも優位に扱うことに反対し、文を動詞と格を伴う名詞句からなる命題を骨組みとするものとして分析したことにある。これにより、主語のない文が用い…