持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『楽しくわかる日本文法』を読む(その2)

文の構造 大久保(1976)では、主部と述語との結びつきが1回出てくる文を「単位文」と読んでいる。 おじいさんは とを あけました。 わかい むすこが すんでいました。 上の例の場合、「おじいさんは」は主文素のみでできている主部で、「わかいむすこが」は…

『楽しくわかる日本文法』を読む(その1)

「文法」の捉え方 大久保(1976:14)は、文法を、「語から句になり、文になり、文と文がつながってさらに1つの文になる。そういう範囲でのコトバの規則のこと」と説明している。中学生向けの説明ではあるが、統語論を中心に据えていることは明らかである*1。…

「プロトタイプ−コア理論」から見たHAVE

HAVEのコアとプロトタイプ HAVEのコアは、X HAVE Yという命題構造で「Xの中にYがある」となり、ひとことで言えば「所有」である(田中1993)。Xは〈空間〉で、Yは〈モノ〉であるから、「名詞+HAVE+名詞」というパターンをとることが多い。主語が〈空間〉を…

「プロトタイプ−コア理論」から見たBE

文法化と意味の漂白化 認知言語学や言語類型論の研究において、「文法化」(grammaticalization)と呼ばれる現象に関心が向けられている。文法化とは、本来は内容語であったものが、徐々に機能語的な表現に転化していく過程である。文法化の過程の中では、「…

「プロトタイプ−コア理論」の展開(続き)

BEの扱い方 BEをコア理論で扱う場合、そのコアは「存在」である。田中らの枠組みに従えば、XとYという2つの変数をとるX be Yという命題構造をなし、「XがYにある」と解釈される(田中・川出1989)。「存在」をコアと考えた場合の論理的妥当性と心理的妥当性…

ミクシィですが・・・

以前から、ミクシィの「英語教育」のコミュニティに参加していたのですが、先日このコミュから退会しました。

「プロトタイプ−コア理論」の展開

プロトタイプ−コア理論 これまで提案してきた、日本語の動詞と結びつけやすい、英語の基本動詞のプロトタイプから意味役割図式を喚起させ、その後学習者が遭遇する用法と照らし合わせながら、徐々にコアへと導いていく考え方を、「プロトタイプ−コア理論」と…

コアの扱い方④

プロトタイプからコアへ すでに日本語の知識をある程度持つ学習者が英語の基本動詞を学ぶときには、対応する典型的な日本語の動詞といったん結びつけて考えると効率的である。例えば、giveという動詞であれば、「与える」という日本語の動詞と結びつけてみる…

コアの扱い方③

ここでの議論は以前のエントリと関連しています*1。 プロトタイプ 言語分析からコアを記述する場合、おおよそ次のような手順を経る。ある単語に100の用例があるとすると、その語義の共通性に着目して20くらいのグループにまとめられる。さらにそのグループ相…

コアの扱い方②

言語転移とコア 外国語学習における語彙の習得で制約となるものが2つある(Jiang 2000)。1つは外国語のインプットの絶対量が不足しがちであることであり、もう1つは母語の概念・意味体系がすでにできあがっていることである。このため、学習者が外国語の…

コアの扱い方①

コアとは何か コアとは、「理屈上、文脈に依存しない(英語でいえば、"context-free"あるいは"context independent"である)意味」のことである(田中1990:21)。文脈に依存しないということは、実際の言語使用の中で見たり聞いたりすることはできないという…