持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2009-01-01から1年間の記事一覧

書くことと言語意識

見てるだけでは不十分 文法知識を身に付けるには、「分かって、使って、感じ取る」の3つの段階を経ることが重要だと考えている。「分かる」とは言語知識を理解することである。文法は形態統語的な形式に関わる知識、意味に関わる知識、語用論的な文脈や場面…

なんでだろう

シャープペンの替芯は机の上に必要か 非常勤先の高校で後期中間試験の試験監督をしていたら、机の上にシャープペンの替芯を置いている生徒が多いことに気付いた。だが疑問なのは、50分の解答時間で芯が何本も必要となることがあるのだろうか。万が一力が入り…

言語事実などについて

予備校と高校 三省堂の『現代英語語法辞典 (Sanseido's Dictionary of Present-day English Usage)』を購入した。現在出講する予備校の講師がツイッターで言及していてその存在を思いだし、出身学部の大学図書館で目を通し、購入を決断した。この講師に限ら…

日本語と英語の力

日本語を利用した英語教育の前に・・・ 「英語の授業は英語で」に対するアンチテーゼとして英語教育に積極的に日本語を活用しようとする動きがある。だが、もっと大事なことは国語教育のなかに外国語学習への基盤を構築する要素を取り込むことではないだろう…

文法教育の現在(その1)

中央教育審議会答申に見る国語科と「ことばのきまり」 中央教育審議会の答申(2008年1月)では、「話すこと・聞くこと」、「書くこと」及び「読むこと」の領域構成を維持することが示されている。また、それまでの〔言語事項〕については、各領域の内容に関…

講師、講師、講師。(その2)

ハッタリ君 どうも、ハッタリ君の時代も終わりを迎えるような気配が漂ってきた。とはいえ、予備校自体が「境界線上の教材」である気もするので、どうなることやら。 若い講師 私よりも若い講師の勉強量には感心させられるし、こちらも発奮させられる。昔、某…

例文暗記

死んだ知識と生きる知識 例文暗記は高校でも小テストネタとして行われることが多い。だが、その多くの場合、丸暗記に陥っていることが多い。丸暗記では応用が利かない。見たことある文では暗記した知識が有効に作用するのかもしれないが、見たことない文であ…

屁理屈

文系英語と理系英語 とある仕事先での話。生徒に向かって盛んに「文系の英語と理系の英語は違う」と説く講師がいた。文系の英語は訳も分からぬまま暗記をさせることが多いが、理系の英語はリクツで説明するのだという。こういう屁理屈にもならない話を熱く語…

人柄

大切なこと 大学の先生方にはいろいろな方がいるようである。その多様性の「変域」は予備校講師のそれとは少々違う気もするが。学問的な情熱みたいなもので言えば、学部時代にお世話になったH先生のような方もいる。ゼミにもお誘いしてくださったのだが、同…

文法のプリント

古いものは15年前? 後期からの高校の授業で進度を確保するため、プリントを配布しようと考え、過去に制作したプリントのファイルを開けてみて書き直しが必要かどうか見ている。すると、こまめに改訂した形跡が見られる項目がある反面、最初に作って以来ほと…

いろいろやってます。

過去の空白期間を利用して国語教育関係の覚え書きを入れている。あくまで覚え書きなのでお気になさらぬよう。こう言うところに書いておくとケータイからでも見ることができるので、何かと便利なのだ。 非常勤先の高校が学期末〜秋休み期間のため、家で仕事を…

講師、講師、講師。

玉石混淆 予備校講師にはいろいろな人がいるとは以前にも書いた。この世界は嫌な人とは挨拶程度の接触だけでもやっていける。講師室でそれ以上の会話をするのは相手に敬意なり好意なりを抱いている場合に限られる。他教科の講師と話をする場合は、その人の人…

高等学校学習指導要領における読解力について(その6)

平成11年改訂版 今回の改訂では、国語科の内容が「A話すこと・聞くこと」「B書くこと」「C読むこと」と〔言語事項〕の3領域1事項に改められた。高等学校の科目は必修科目が「国語表現I」「国語総合」のいずれかとなり、選択科目が「国語表現II」「現…

高等学校学習指導要領における読解力について(その5)

平成元年改訂版 このときの改訂では国語科教育が言語の教育の立場に立ち、内容が2領域1事項からなることが踏襲されている。高等学校における科目編成は「国語I」「国語II」「国語表現」「現代文」「現代語」「古典I」「古典II」「古典講読」に再編さ…

高等学校学習指導要領における読解力について(その4)

昭和53年改訂版 これに先立つ教育課程審議会の答申で、国語科では文学教育偏重ではなく、日常の言葉の能力や態度の育成に力点を置き、言語の教育の立場から表現力や理解力を育成することという方針が立てられた。その内容は小・中・高を一貫して「A表現」「…

高等学校学習指導要領における読解力について(その3)

昭和45年改訂版 このときの改訂では科目編成の変更はない。よってここでも「現代国語」を取り上げる。「現代国語」の目標は次のようになっている。 国語による理解と表現の能力を高め,思考力・批判力を伸ばし,心情を豊かにする。 目的や場に応じて的確に聞…

高等学校学習指導要領における読解力について(その2)

昭和31年改訂版 これは昭和26年試案中のものを改訂したもので、教科内の科目編成を「国語(甲)」「国語(乙)」「漢文」として整理した。このうち「国語(甲)」が必履修科目で、「国語(乙)」「漢文」は分化、発展させたものである。 「国語(甲)」では…

高等学校学習指導要領における読解力について(その1)

昭和26年改訂版 ここではまず、「小学校・中学校・高等学校における国語学習指導の一般目標は何か」という項目を設けている。このなかで、目標の提示に先だって言語の役割について言及している。 言語は,互いに意思を通じ合うのに必要で,社会生活には欠く…

PISAにおける「読解力」について

このエントリーはこちらと関連したものです。 PISAにおける「読解力」の定義 OECDのPISA調査における「読解力」(reading literacy)は、次のように定義されている。 Reading literacy is understanding, using and reflecting on written texts, in order t…

文化審議会答申について

「文学」と「言語」 文化審議会答申の中で国語科教育のあり方に関する言及もあり、そのなかで「文学」と「言語」の2分野に整理していく方向性が示唆されている。「文学」は情緒力の育成に主眼を置いたものとされ、「言語」は国語の運用能力の育成を主な目的…

文化審議会答申「これからの時代に求められる国語力を身に付けるための方策について」(2004年2月)

第1:国語力を身に付けるための国語教育の在り方(1国語教育についての基本的な認識) 国語教育は社会全体の課題 国語教育は学校教育・家庭教育・社会教育などに通じる社会全体の課題 言葉への信頼を育てることが大切 日本人の多くが言葉の力を信じていな…

文化審議会答申「これからの時代に求められる国語力について」(2004年2月)

覚え書きです。 第1:国語の果たす役割と国語の重要性 個人にとっての国語 知的活動の基盤を成す 感性・情緒等の基盤を成す コミュニケーション能力の基盤を成す 社会全体にとっての国語 国語は文化の基盤であり,中核である 社会生活の基本であるコミュニ…

古文の夏(その2)

単語集の用例 古語の用例を見ていて、気付いたことがある。動詞の用例に連体形のものを採用したものが多いことである。動詞はどのような名詞句と共起するか分かるように、主節の述語の位置で用いられている用例を示すべきだと思うのだが、そういう配慮とは別…

古文の夏

現代語と古語との相違 今月に入り、古文を学び直している。英語教師が言語知識の幅を広げるために英語以外の外国語を学ぶケースも多い。だが私は、母語である日本語を見つめ直したいという気持ちがあり、まず古文を学ぼうと思った。古語というのは日本語なの…

問題演習と解法

解法を教えるか否か 入試問題を教材として授業を行う場合、問題形式に対する解法を教師が示すのは当然である。解法も教えずに答え合わせだけを行い、ひたすら演習量を積み重ねていくやり方が一番問題だと思う。また、入試問題を素材とする教材で授業を行うな…

受験対策に問題演習の愚

受験英語にもクラッシェンの波 以前にも書いたが、受験英語もナチュラルメソッドの時代なのだ。入試問題が解けるようになるには入試問題をたくさん解けばよいというのだ。このため、入試問題の演習開始時期が繰り上げられ、高校低学年のうちから問題演習づけ…

理論と技術

授業アンケート 予備校の授業では授業アンケートが付きものである。今年から出講している予備校では初年度ということで、打ち出されたデータの見方やその後の授業への反映のさせ方などを、学務担当の職員から説明していただいた。昔教えていた予備校では講師…

電子辞書のこと

携帯辞書今昔 私が携帯サイズ*1の辞書を使い始めたのは、高校時代に『新コンサイス英和辞典』を使い始めたのが始まり。サイズの割に収録語数が多く、大学時代も使うことが多かった。予備校講師をするようになってしばらくは実家から仕事に行っていたため、新…

リーディングストラテジー

キャッチーリーディング 予備校の英語には「○○リーディング」という、キャッチーなネーミングの読解法が教えられていることがある。特に単科講座や季節講習では、講座名と数行の紹介文で講座の概要を語り、受講生を引きつけなければならないために、こうした…

逆向き受験英語

授業は答え合わせ 文法の授業というのは、答え合わせなのだ。あとは参照用に持たせている総合英語の参考書で各自確認すればよいのだ。・・・ということになっているらしい。こんなことをわざわざ「ライティング」の授業時間を使って行う必要があるのか疑問で…