持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

文化審議会答申について

「文学」と「言語」

文化審議会答申の中で国語科教育のあり方に関する言及もあり、そのなかで「文学」と「言語」の2分野に整理していく方向性が示唆されている。「文学」は情緒力の育成に主眼を置いたものとされ、「言語」は国語の運用能力の育成を主な目的とするものである。審議会のメンバーのひとりである藤原正彦氏の意向が反映されているのだろうか、早い段階では情緒力育成の「文学」のほうが言語能力育成の「言語」よりも優先的に扱われるべきとし、それを「発達段階に応じた国語教育」と称している。
だが、この場合「文学」での高度な鑑賞や味読がおろそかになるおそれがある。また、ごく初期の「文学」教育を読み聞かせによって行う場合、その題材をどのように選ぶのかといった問題がある。一方の「言語」にしても、これをどのように身につけていくのかという具体的な方法論までは答申には言及されていない。寺井(2009)は言語活動を通じて達成感や成功感を積み重ねていくことが大切であると指摘し、単元学習の有効性を訴える。それでも、漢字を含めた語彙、そして文法といった言語知識をどのように身につけていくべきか、その方法は明示的なのか、非明示的なのかといった問題も残る。外国語学習の基盤として国語力が求められると答申にある以上、外国語学習につながる国語学習のあり方と言う視点からも国語科教育を考えていく必要がある。

参考文献

  • 寺井正憲(2009)「言語活動の充実、あるいは人を育てるということ」『月刊国語教育研究』2009年4月号 pp.2-3.