持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

学習文法における「入力」

ここで論じることは、以前扱ったものに対する補足的な内容となっています*1。 反クラッシェン的見解 井狩(2006)は、脳科学の立場からKrashenの見解を否定している。脳全体、特に前頭前野が活発に活動する意識的な処理から、脳の一部のみが活動する無意識的な…

ちょっと気になること

『英語教育』の古い記事を読んでいたら、気になることが出てきた。といっても、以前から関心を持っていたことでもあるのだが。 訳読をめぐる議論 河上(1967)は、日本人が英語を読む力が弱い理由を、読むという作業が「訳読」に終始しているためであると指摘…

学問としての英語?(続き)

「学問としての英語」とほぼ同義と思われる表現に「言語学としての英語」という表現がある。やはり「コミュニケーションとしての英語」や「道具としての英語」と対立する概念を指しているようである。しかし、言語学とは言語のありのままの姿を捉えるための…

チャンキング文法とシラバス

統語知識の提示 リーディングにおいてチャンキングを行うに先立って、文法知識をあらかじめ提示するかどうかに関して、大学受験対策など、学習期間が限られていて、しかも学習者の母語がある程度完成している状況では、先行提示は有効であると考える。方法論…

学問としての英語?

世の中には妙な言い回しがある。その中の1つに「学問としての英語」というのがある。おそらくこの概念は、「コミュニケーションとして英語」と対立するものと思われる。後者も後者で「コミュニケーション」の英語と言っても英会話*1程度の意味なのだが、前…

チャンキング文法④

複文構造におけるチャンキングと日本語(続き) S+V+thatの場合(続き) S+V+thatの主節表現の中には、中右(1994)のいう「Sモダリティ」相当する表現が含まれている。モダリティの把握はテクストの書き手の意図を把握する上で重要であるから、S+V / that...…

チャンキング文法③

チャンキングと日本語 英語のリーディングにチャンキングの考え方を応用していく場合、学習者は母語である日本語の助けを借りながら訓練していくことになる。文単位での和訳と違い、チャンク単位での和訳では日本語の語順を過度に意識しなくても意味処理が行…

チャンキング文法②

断片化の文法と断片連鎖の文法 深谷・田中(1996)によれば、「チャンキング」には発話単位を生成する「局所的チャンキング」と、発話単位を拡張して情報の追加・修正を行っていく「拡張的チャンキング」があるという。リーディングにおいて局所的チャンキング…

チャンキング文法①

チャンクとチャンキング 英文を構造規則などに従ってスラッシュで切り取り、断片化したものがチャンクである。そしてチャンクごとの理解内容をつなぎ合わせていくことがチャンキングである。このチャンクという視点で学習文法の再構築を試みたのが田中(1993)…

文法にこだわらない読み方?

スラッシュを入れて読むときの問題点 スラッシュ・リーディング、フレーズ・リーディング、チャンク・リーディング。呼び方はさまざまであるが、英文を語順に即して読む際にスラッシュを入れていくことは、情報処理単位を意識しやすくするためには有効である…

温故知新―『奇跡の英文解釈』を読む②

内容スキーマの重視 長崎(1977)に収められている練習問題で興味深いものは、定義が述べられている短い文章を読み、それが何の定義なのかを答えさせる問題である。この練習問題は内容に基づいて配列されている。英文解釈というと、それまでは原(1991)のような…

温故知新―『奇跡の英文解釈』を読む①

隠れた名著 『奇跡の英文解釈』(長崎玄弥著、祥伝社、以下長崎(1977))は受験参考書でありながら、当時の受験参考書とは一線を画す内容となっている。当時の学校文法の枠組みにこだわっていないし、訳読式でもない。だが、同じ年に出た『英文解釈教室』(伊…

試験対策におけるaccuracyの確保

出題傾向とreading skills 大学入試に限らず、英語の試験の多くでは、マークシート解答用紙が使用されている。本来は採点の便宜を図るものであったが、この方式の導入によって必然的に記述式の問題が排除されることとなる。記述式の問題が消滅すると、下線部…