持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

中高教員と予備校講師の「自己研鑽」

中高教員の「自己研鑽」 中学校や高等学校の教員(正教員=教諭)になるには、一般に教員免許が必要になるため、教免法で定められた科目を大学の教職課程で履修することになる。とはいえ、教員採用試験は以前ほど学力重視ではなくなっていているから、高度な…

「パラリー派」と「構文派」のミゾをめぐって

両者の言い分 英文読解の方法論に関して、特に受験英語の世界で見られるのが、「パラリー派」と「構文派」の対立である。「パラリー派」とはパラグラフリーディングを身につけることを読解学習の中心に据える立場であり、「構文派」は「構文」によって英文を…

和訳はダメなのか?

大学入試に和訳が出ているということ 靜(2006a,b)では、大学入試の英語問題における最大の問題点は下線部和訳問題*1にあると指摘している*2。この問題点に関して、靜(2006b)から3つの論点を引き出すことができる。 入試に下線部和訳問題が出題されることの…

書き言葉の国文法とメタ言語能力

小学校低学年の子どもの文 高橋(1985)は、低学年の子どもが主語・述語の関係の整っていない文を書くことがよくあると指摘している。このような場合、子どもに文の構造を教えるためには「拡大の原理」が有効であると高橋は述べている。「拡大の原理」とは、文…

受験英語とは何か

受験英語の「流派」? 「先生は、どの先生の教え方で教えているのですか?」 この質問は一見すると、意味不明に感じられる。発言者は多くの場合予備校生で、発言の相手は予備校講師である。参考書を出しているような全国的な知名度を誇る大手予備校講師の「…

「作文書いたんだけど、これじゃ先生に叱られるかな」

http://d.hatena.ne.jp/terracao/おもしろいブログです。私個人的にはコミュニケーション能力やイデオロギーに関わる記事が特におもしろいと思います。英語教育に携わる者が忘れがちな、それでいて非常に重要な論点を提供してくれています。 是非、一度ご覧…

文理解と論旨の把握

内容をまとめる能力 学校国語*1や受験現代文では、傍線部解釈や空欄補充などの局所的な理解が求められる設問が多い*2。しかし、浜田(1996)が指摘するように、文章の論旨が明確に把握できなければ、内容の理解ができたとは言えない。浜田によれば、論旨を把握…

読解文法の定着

読解文法の理解 明示的で演繹的な文法指導は、暗記中心ではない方が望ましい。読解文法では書き言葉では使用頻度が低い文法事項を排除し、本当に必要な知識のみを扱うようにする必要がある。文法をFORM、MEANING、USEの3つのレベルで見た場合、MEANINGに関…

分かって、使って、感じ取る

英語は暗記科目ではない? 受験英語の世界は、教え方が「差異の戯れ」と化すことが多い(入不二1997)。このため「英語は暗記科目ではない」という発言が予備校講師によってなされることは決して不思議ではない。しかしこの発言を正しく理解している受験生は…

メタ言語能力

「メタ言語能力」とは何か 最近の言語教育・言語学習の言説において「メタ言語能力」という言葉に出くわすことが多い。大津(2006)ではメタ言語能力を「言語を意識化させる能力」と定義している。意識化とは、必ずしも文法用語を使って説明できることを意味す…

国語教育における文法教育と文法研究

日本語関連諸分野における対話の幕開け 日本語学会春季大会では「文法研究と文法教育」と題したシンポジウムが催され、国語教育・日本語教育・日本語学の各分野で研究に従事するパネリストが集まった。このシンポジウムの趣旨のなかで司会者の仁田(2006)は、…

意識学習

文法を教える教師、教わる学習者 英語教育のコンテクストの中で、従来から行われている文法指導の問題点にはすでに指摘されているものが多い。そのなかでも比較的浸透していないと思われる問題点が、文法をなぜ教えるのかをしっかりと認識している教師が意外…

「書くこと」の基本または根源

書く内容の重要性 日本語にしても英語にしても、文章を書くときには書く内容が重要であることは言うまでもない。英語で語彙・文法・発音などの知識を身につけても話す内容を持っていなければ、英語を話すことはできない。すると話す内容というのは、英語学習…

英語教師のための英文法

ゼロからのスタートではないのだが… 最近、英語を教え始めたのだが自分自身に英文法の体系的な知識がなくて困っているという声を耳にする。学習者としては英文法の全体的な体系を知らなくても、実際に英語ができるようになれば、それはそれで成果である。し…

受験英語の英文法―文法問題対策と読解文法

文法問題の問題点 大学入試の英語の出題を見ていると、現在でも独立した形式での文法問題が出題されている。大学によっては出題比率と合格ラインの関係上、文法問題さえ解ければ合格できてしまうことも決して珍しいことではない。こうした文法問題が出題され…