持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

意識学習

文法を教える教師、教わる学習者

英語教育のコンテクストの中で、従来から行われている文法指導の問題点にはすでに指摘されているものが多い。そのなかでも比較的浸透していないと思われる問題点が、文法をなぜ教えるのかをしっかりと認識している教師が意外に少ないことである。
確かに、「英文法は英語の基礎である」という言い方がなされることは多い。しかし基礎としての英文法が、学習者が英語を運用していくときにどう活かされるのか、または文法学習を経ると学習者は何ができるようになるのか、ということを具体的に認識し、学習者に伝えることができる教師はまだまだ多くないように思われる。
文法学習は無味乾燥な規則の集合を暗記すること、というイメージが依然としてつきまとう。このイメージを払拭するために文法学習の内容を見直そうという動きがこの20年くらいのあいだで盛んになってきている。しかし文法学習の内容を見直すことと同時に必要なのは、文法学習の目的を意識することである。これは教える側がまず認識しなければならないし、教わる側も知るべきであり、学習活動に疑問を感じる場合は教師にその目的を尋ね、納得したうえで学習に望むべきである*1

副作用は薬のせいか、処方のせいか?

どこかのテレビ番組で、薬には必ず副作用があると言っていた医師がいた。薬は医師の処方によって初めてその効果を最大限に発揮するものなのであろう。同じことが英語教育における指導法や学習法にも言える。文法偏重の是正という考え方から、リーディングにおける文法訳読やスピーキングにおけるパターンプラクティスが批判されることが多い。しかしここで大切なことは、文法訳読やパターンプラクティスを完全に排除することではなく、これらの長所・短所をしっかりと把握し、長所を最大限に生かし短所を克服するような利用の仕方を考えることである。
また、こうした問題意識は従来から自由度が低いと言われる進学校や予備校などでの受験指導においても必要である。というのもいくら受験英語だと言っても、単語をひたすら覚えているだけであったり、文法学習ばかりをしているようでは成果は上がらない。教師は学習の全体像を把握したうえで、文法学習や語彙学習を適切に位置づけ、それらに続く、または同時に進行する学習活動との関連づけをしておくことが重要である。このことは英検・TOEFLTOEICなどの「次世代型受験英語」においても同様である*2

*1:低年齢の学習者の場合は、保護者の理解を得ることも大切である。

*2:ときどき気づいていない人がいるが、試験によって学習内容が規定される英語教育/学習はすべて「受験英語」である。