持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

文章にとって文法とは何か(その6)

コンポジションにおける文論 作文指導においては、内容面の指導に重きが置かれて、文法などの形式面について細かく追求しないことが多いように思う。しかし、正確な文を書かなければ、内容を正確に表現することはできない(森岡1963)。ここでいう正確という…

悪文理解教育

国家公務員採用試験に見る「小論文」試験 国家公務員の採用試験には幹部候補のI種、それ以外の大卒向けのII種、高卒や再チャレンジ向けのIII種の試験がある*1。これらの試験にはいわゆる「小論文」の試験がある。ただし、その内容や評価項目は職種によって…

コア理論についての考察(その3)

分節化と語彙力 前回、「認知言語学による『使える文法』」については特に貢献しているとは言えないと述べた。しかし、これは認知言語学だから話し手に密着した文法になるわけではないということである。実は、認知言語学には「使える文法」につながる知見が…

文法についての雑感

いまこのブログでは、日本語の、文章理解/表現における文法知識の役割と、英文法のコア理論と同時進行でやっているところ。コア理論、というかCPN理論が語彙や文法の学習に与えた影響は大きいと思う。だが、同時にその難解さゆえに多くの教師や学習者に…

コア理論についての考察(その2)

「使える英文法」と認知言語学 「認知言語学による『使える英文法』」ということが言われる。これはいったいどういうことなのだろうか。田中(2008)は認知言語学の前提として「言語は人々の世界のとらえ方を反映している」ということを挙げている。そして、こ…

コア理論についての考察(その1)

「学習文法理論」と「学習文法」 pedagogical grammarに対する訳語として、「教育文法」が阿部(2000)や佐藤・河原・田中(2007)によって用いられるようになってきた。しかし、この用語が問題の所在を曖昧にさせているのも事実である。佐藤らは、「健全な教育…

文章にとって文法とは何か(その5)

文法における文論 文論とは、文の構造を扱うものである。しかし、これが問題である。遠藤(1970)は、文論で扱う文の構造とは、主語・述語・修飾語・接続語・独立語などの文の成分であると言う。これが妥当なのかどうかが問題なのである。文の成分という考え方…

文章にとって文法とは何か(その4)

文法における文章論(続き) 文法における文章論は文章の表現の展開を分析するところから始まった。この場合、句や文の接続部分に着目することになる。形式面で言えば、連用中止法による接続法、接続助詞や接続詞を用いる場合、副詞や指示語の用法などが問題…

文章にとって文法とは何か(その3)

文法における文章論 文章を日本語の文法研究の対象としたのは時枝誠記が最初である。時枝(1950)は、文の集合が決して文章にならないことは明らかであるとし、文章が文章として成立するための法則を明らかにすることが、文法研究における文章論の目的であると…

文章にとって文法とは何か(その2)

文法の範囲 文章表現、あるいは文章理解のための文法の範囲とは、どのように設定すればよいだろうか。時枝(1960)は当時の文法軽視の風潮に対して、文法が国語の読解・作文に役立たないのは、文法自体に問題があるのではなく、文法教育をもっぱら単語論に終始…

文章にとって文法とは何か(その1)

文法の目的・効果 白石(編)(1972)では、文法の目的・効果として、次の5点を挙げている。 文法によって話が正しくでき、文章が正しく書けるようになる。 人の話がよくわかり、文章の意味が正確に読み取れるようになる。 国語の法則的な事実のだいじなもの…

結局、書き方なんて教わっていない。

作文教育のこと ここまで作文や文章表現の指導/学習について見てきたが、率直に言って、「こんなこと教わったことないぞ」ということが多かった。いままで経験してきた作文教育とは何だったのであろうか。ただ、日本語の文章を書くということに真剣に取り組…

文章におけるレトリックとは何か(その11)

修辞 レトリックの第3の要素は「修辞」である。レトリックがこの修辞と同義と捉えられることが多いが、これは弁論術としてのレトリック全体からみればその一部でしかない(澤田1977)。しかも、修辞は美文を追求することに留まらない。場面や文脈に最適な言…

文章におけるレトリックとは何か(その10)

構造的段落*1 いくつかの文が集まると段落となる。しかし、単に文を集めればよいというわけではない。松本(1993)は、タバコを吸うときに改行するのだと言った日本人作家の話を引き合いに出している。これは、日本語の文章表現や文章理解において段落という単…

文章におけるレトリックとは何か(その9)

配列 書く内容が決まってくると、どのように書くのかということもある程度決まってくる。逆に言えば、「こういう文章を書こう」と思っていても、内容がそれに伴わなければ、当初想定していたような文章にはならないことになる。澤田(1977)は、配列の方法とし…

文章におけるレトリックとは何か(その8)

醗酵させる知恵 資料集めさえすれば、書くべき文章の内容が決まるというわけではない。断片的な知識であったものが、自分の考えとして形にするプロセスを経なければならない。板坂(1973)はこれを「醗酵させる」と呼んでいる。知り得た知識を関連するもの同士…

文章におけるレトリックとは何か(その7)

構想(続き) レトリックの「構想」とは、論文を書く場合の「トピックを選び出す」「資料を集め批判する」「仮アウトライン」をつくるという過程に対応する(澤田1977)。「トピックを選び出す」ということに関して、澤田は「問題の場」と「問題(=トピック…

文章におけるレトリックとは何か(その6)

古典レトリックの5要素 弁論術としての古典レトリックには5つの構成要素があるとされている(澤田1977)。5つの構成要素とは、「構想」「配列」「修辞」「記憶」「発声・所作」である。これらはラテン語からの訳語で、日本語の用語は何通りかある。このあた…

弥生・朔日

ブックマークと検索と ブログのアクセスログを見ていると、ブックマーク、アンテナ、RSSなどから定期的にアクセスしている方と、検索結果からアクセスしてくる方がいらっしゃいます。後者の場合、英文法関連の用語からたどり着くことも多いようで、かなり古…