文章におけるレトリックとは何か(その7)
構想(続き)
レトリックの「構想」とは、論文を書く場合の「トピックを選び出す」「資料を集め批判する」「仮アウトライン」をつくるという過程に対応する(澤田1977)。「トピックを選び出す」ということに関して、澤田は「問題の場」と「問題(=トピック)」を区別している。例えば、「道路特定財源が問題だ」という言い方をしても、これは本当の問題ではない。問題、すなわちトピックとは、一定の答えを要求するものでなければならない。この場合で言えば、「道路特定財源を一般財源化すべきか」のようにすべきなのだ。澤田は漠然とした「問題の場」を制限し、トピックを絞り込むことが大切だと説いている。受験参考書でも岡田(1991)は問題とは何かという問題提起をして受験生に「問題の場」を制限することの重要性を訴えている。
「資料を集め批判する」に関しては、「資料を集める」と「批判する」を分けて考えるべきであろう。前者は社会人向けの文章表現の指南書にはたいてい言及されている。論文の書き方を説く澤田のように図書館の使い方から説明しているものもあれば、より幅広い文章作成をカバーする阿部(2007)のようにファイリングの重要性について説くものもある。資料集めとは実に骨の折れる作業でありながら、文章を書くにはどうしても必要な作業である。このため、資料集めの負担を軽減すべく、論述試験の対策講座では「論点講義」と呼ばれる講義が開講されている。後者の「批判する」とは、資料が信頼の置けるものかどうかを考えることである。実は、私にとってはこのブログを書くという行為自体が資料を集めて批判することである。またブログの記事が資料として広く活用されるためには、この批判に耐えるものでなければならない。参考文献のリストをブログ記事につけているのは、自らの資料集めの結果であることを表すと同時に、記事自体に資料としての価値を持たせているのである。
参考文献
- 作者: 阿部紘久
- 出版社/メーカー: くろしお出版
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- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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論文って,どんなもんだい―考える受験生のための論文入門 (駿台受験シリーズ)
- 作者: 岡田寿彦
- 出版社/メーカー: 駿台文庫
- 発売日: 1991/08
- メディア: 単行本
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