持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

国語教育におけるパラダイムの転換

モノローグからダイアローグへ 現在の学習指導要領では国語教育においても、「話す・聞く」力が重視されている。この背景には英語教育のみならず、国語教育においてもコミュニケーション能力の育成がキーワードとなっているためである。しかし村松(2006)によ…

日本の学者は解る論文が書けない?

「しゃべり軽蔑意識」 澤田(1983)は論文作法をレトリックの視点から捉えているが、日本人の学者が英語の論文をうまく書けない理由として、しゃべることへの嫌悪・軽蔑ということを指摘している。そもそも学者がうまく論文を書けないということが事実かどうか…

「生活綴方」という発想(その1)

すべての教科の基礎としての国語力、英語力の基礎としての日本語力 「生活綴方」というと、教育史や受験日本史で出てくる概念・用語というイメージしか浮かばない人が多いかもしれない。しかし国分(1962)に見られるように、綴方はすべての教科の基礎としての…

主要部パラメータと日英学習文法

「鏡像」の例外となる現象 日本語と英語の語順が鏡像関係をなすため、岡田(2001)のようにXバー理論と主要部パラメータ(head parameter)に基づく説明法により学習者が日英語の語順の違いを理解しやすくなるという提案も出ている。主要部パラメータの設定値…

再び基本文型について

英語における「名詞+動詞+名詞」の重要性 英語学習の入門期においては自己紹介などの活動を通じて英語の文構造に習熟させようとすることが多い。しかし、この場合は人称代名詞の使用が不可欠であり、日本語を介した明示的文法指導を行う際に現実には使われ…

英語教師のための対照言語学

本書が拠り所としている理論的枠組みは必ずしも最新のものではないが、日本人英語教師が知っておくべき日本語の知識がかなりカバーできる本だと思う。どう著者の英文法を扱った著作と併せて読むといっそう理解を深められると思う。

英語の人称代名詞と対応する日本語の問題

直訳が難しく感じられるとき 中村(2003)は、学校英文法で例文に与えられている訳文が便宜上の試訳であって実際に使われる日本文とは似て非なるものであることを学習者に教えるべきであると指摘している。 I'll buy you this shirt. 私はあなたにこのシャツを…

鏡像関係または主要部パラメータ値

OV言語とVO言語 前回も触れたように、日英語の語順のもっと大きな違いは、日本語では「目的語+動詞」となるのに対して英語では「動詞+目的語」となる点である。こうした現象は「鏡像現象」(安藤1986)と呼ばれている。 岡田(2001)はこの事実をXバー理論…

学習文法理論における「主語」と「述語」

学習者の躓き 明示的な文法指導を行う場合、最初の関門は文の仕組みを教えることである。英語の主語・述語について学習者が躓く理由を、黒川(2004)は日本語からの類推、すなわち日本語の論理で英語を捉えようとするためだと説明している。学習者が日本語から…

英語の意識的学習と日本語の知識

英語の意識的学習の重要性 日本語を母語とする大人が外国語として英語を学習していく際に重要なのは、英語の知識を意識的に学習していくこと(conscious learning)である。阿部(2004)は、この理由を大人の持つ分析的な特性を生かすことが効果的であるからで…

「コア理論」に基づく学習英和辞典

06年4月からスタートするNHK教育テレビの英語講座「新感覚★キーワードで英会話」と同じ理論的枠組みで書かれた学習英和辞典。 単に「意味調べ」のために引く辞書ではなく、使っていくうちに学習者の語彙力が徐々に向上していくように考慮されているところ…

「新感覚★キーワードで英会話」

「コアイメージ」であなたの英語が変わる! 中学レベルの基本語を使い切ることを目標とするNHK教育テレビの英語講座、「新感覚★キーワードで英会話」が4月4日(火)よりスタートします。メインの担当講師は、このブログでもときどき文献を引用させてい…