持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2023-01-01から1年間の記事一覧

日本語の形容詞(その6)

前回の記事 この記事は前回からの続きになります。 ownricefield.hatenablog.com 形容詞の活用(続き) 鈴木(1990: 69)は、日本語の形容詞には次のような文法上の性格を持つと指摘しています。 ①現代語では、「く・い・けれ」と一律に活用する。 ②そのままで…

日本語の形容詞(その5)

形容詞の活用 古典日本語においては、形容詞の活用にはク活用とシク活用の2通りがあります。しかし現代日本語においてはこの区別はあまり有効なものではありません(森田2008: 168)。たとえば、「美しい」「おいしい」のような「しい」という語尾を持つ形容…

日本語の形容詞(その4)

前回の記事 この記事は前回の続きになります。 ownricefield.hatenablog.com 日本語の形容動詞文と対応する英語 前回の形容詞文に続いて、今回は形容動詞文のお話です。学校国文法の枠組みにおいて、形容動詞は現代日本語で唯一、終止形と連体形が異なってい…

日本語の形容詞(その3)

前回の記事 この記事は前回からの続きになります。 ownricefield.hatenablog.com 日本語の形容詞文と対応する英語 今回は日英語の比較対照のお話に入っていきます。日本語の形容詞が-iと-kattaで時制を表し現在と過去を表し分けるしくみを備えているのに対し…

日本語の形容詞(その2)

前回の記事 この記事は前回からの続きになります。 ownricefield.hatenablog.com 形容詞と形容動詞(続き) 前回の記事でも見てきた形容詞と形容動詞についてもう少し掘り下げていきます。英語母語話者向けの日本語文法書であるAkiyama and Akiyama(2012)は…

日本語の形容詞(その1)

形容詞と形容動詞 日本語を学校国文法の枠組みで見た場合、「形容詞」と「形容動詞」という品詞が設定されています。両者は別の品詞とされていますが、意味の面ではいずれも「事物の性質、状態を表す語」(尾上1982: 17)と定義されます。このため、形容詞を…

『英文理解のための基礎知識』から『英文理解の基礎知識』までの四半世紀(その4)

『英文理解のための基礎知識』からの四半世紀 『英文理解のための基礎知識』は、その後に持田が予備校や塾で教えていく際の指針となっていました。構文主義てきなものを、中学英語レベルから取り組めるようにしていくための、1つの方向性を示すことができた…

『英文理解のための基礎知識』から『英文理解の基礎知識』までの四半世紀(その3)

構造規則の明示化 『英文理解のための基礎知識』では構造規則の明示化にこだわりました。このあたりの理論的背景については当ブログで過去に書いておりますのでリンクを貼っておきます。 ownricefield.hatenablog.com ownricefield.hatenablog.com ownricefi…

『英文理解のための基礎知識』から『英文理解の基礎知識』までの四半世紀(その2)

『英文理解のための基礎知識』のコンセプト 1996~1997年に書きまとめた『英文理解のための基礎知識』は、英語の統語構造を可視化することに努めました。これはまず、持田が受験生だった時に触れた高橋善昭先生の講座とご著書の存在がありました。 英文読解…

『英文理解のための基礎知識』から『英文理解の基礎知識』までの四半世紀(その1)

『英文理解のための基礎知識』以前 持田が大学に入ったのが1993年ですが、その頃から流行りだしてきたのが、認知意味論をベースにした学習英文法でした。バラバラに覚えてもなかなか定着しない、母語である日本語に干渉されて間違えて覚えてしまう、といった…