日本語の形容詞(その1)
形容詞と形容動詞
日本語を学校国文法の枠組みで見た場合、「形容詞」と「形容動詞」という品詞が設定されています。両者は別の品詞とされていますが、意味の面ではいずれも「事物の性質、状態を表す語」(尾上1982: 17)と定義されます。このため、形容詞を「~い」形容詞、形容動詞を「~な」形容詞と呼び、両者を「形容詞」という1つの品詞の下位区分と見なすこともできます(黒川2004: 197)。
形容詞と形容動詞の違いは形態的なものです。形容詞は「~い」で終わり、形容動詞は「~だ」で終わります。形容動詞は「名詞+だ」とも似ているため、この形態上の理由から形容動詞という品詞を認めない考え方もあります(時枝1950)。安藤(1986)も時枝と同様の立場をとりますが、「名詞+だ」の「名詞」の部分が性質や状態を表すという点で形容詞と似ているということも指摘しています(安藤1986: 77)。また、形容動詞の語幹は、主語になれないという点で名詞とは異なるという指摘もあります(尾上1982: 17)。
形容詞・形容動詞と動詞
日本語の形容詞・形容動詞は、動詞に近い性質があり、未然・連用・終止・連体・仮定という5つの形に活用します(命令形は現代日本語にはない)。命令形がないことは、形容詞・形容動詞と動詞の顕著にしています。動詞は表す状況がいつ生じて、続いて、終わるのかという「相」(aspect)を表すことができますが、形容詞・形容動詞には相を表すことができません(大野1978: 100)。このため、形容詞・形容動詞には「ル形」に相当する「~い」「~だ」で終わる語形と「タ形」で非過去と過去を表し分けることができますが、「テイル形」はありません。
(続く)