英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その6)
語順と語形(続き)
英語の副詞、とりわけ様態を表す副詞の扱いには、注意が必要である。ここには英語と日本語で品詞のズレが存在する。
日本語の場合、形容詞または形容動詞の連用形というものがあって、それが英語の副詞と同じ働きをしているので、なおさら、副詞という概念が生徒の頭の中にきちんと成立しにくくなっているなっているのではないだろうか。*1
英語のhappilyは副詞ですが、日本語の「幸せに」という語は、副詞でなく形容動詞ですし、英語のhighlyは副詞ですが、日本語の「高く」という語は形容詞です。日本語の「幸せに」と「高く」は、それぞれ「幸せな」や「高い」の連用形という形であって、活用形が変わっても品詞が変わることはありません。言い換えると、英語ではhappyとhappilyでは別の語なのに、日本語の「幸せな」と「幸せに」は同じ語が活用変化しただけで、形容動詞であることに変わりはなく、同様に、「高い」と「高く」も形容詞であることに変わりはありません。*2
「『美しく』だから副詞だよね?」という説明は意味をなさない。「美しく」は形容詞の連用形であると国語の授業で学んでいるのだから、日本語の品詞の枠組みでは英語の品詞の枠組みは理解できない。程度の副詞にも同様の問題がある。
形容詞を修飾するのは、英語では副詞だけで、very good(とても良い)やextremely difficult(きわめて難しい)のように副詞が形容詞を修飾します。日本語では、「とても大きい」のように副詞が形容詞を修飾するほか、「すごく嬉しい」のように「すごい」という形容詞の連用形「すごく」が形容詞を修飾することもできます。*3
こうしたところからも、英語の仕組みの中で英語の品詞を捉えていく練習が求められる。
実際の教材の副詞的修飾語は次のように項目立てを行っている。
- 〈様態〉を表す語句:(主語+)動詞+(目的語+)〈様態〉の語句
- 〈場所〉を表す語句(位置・方向):(主語+)動詞+(目的語+)〈場所〉の語句
- 〈時〉を表す語句:(主語+)動詞+(目的語+)〈時〉の語句
- 〈頻度〉を表す語句:主語+〈頻度〉の語句+述語動詞+目的語
- 〈話し手(書き手)の気持ち・判断〉を表す語句:〈気持ち・判断〉の語句+主語+述語動詞(+…)
このうち、上の4つの語句については文頭に生じる場合も別に扱っている。また程度の表現については『短文で覚える英単語1900』の例文には皆無であったため、今回は取り立てて扱わないこととした。なお、〈時〉に関しては、「絶対時間」と「相対時間」による前置詞の有無の判断を導入している*4。またこれらの副詞的修飾語とは別に、onlyやevenを扱う必要があるが、ここではこれらの語が名詞を修飾することもあることをしっかりと伝えておく必要がある。これについては、tall John「のっぽのジョン」のtallがジョンの性質を表しているのに対して、only John「ジョンだけ」のonlyはジョンの性質には関わっていないことを理解してもらうようにした。ここで品詞を意味で定義しておくことの意義が出てくるのである*5。
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