日本語の形容詞(その5)
形容詞の活用
古典日本語においては、形容詞の活用にはク活用とシク活用の2通りがあります。しかし現代日本語においてはこの区別はあまり有効なものではありません(森田2008: 168)。たとえば、「美しい」「おいしい」のような「しい」という語尾を持つ形容詞も、「よい」「うまい」のような「い」という語尾を持つ形容詞も同様の活用をするからです。どういうことかというと、古典日本語では終止形と連用形の対応は次のようになります。
- よ-し[終止形]→よ-く[連用形]
- うつくし[終止形]→うつくし-く[連用形]
「よし」は終止形の語尾の「し」が連用形では「く」に変化します。これに対して、「うつくし」は終止形から連用形に変わるときに語尾の「く」が付加されます。つまり、「よし」には終止形にも「し」という語尾があるのに対して、「うつくし」には終止形では語尾が付加されないのです。これがク活用とシク活用の違いです。ところが、現代日本語ではこのような形態的な差が消失しています。
- よ-い[終止形]→よ-く[連用形]
- うつくし-い[終止形]→うつくし-く[連用形]
どちらの形容詞も、語尾が「い」から「く」に変化することによって終止形から連用形に変わります。
(続く)
参考文献
- 森田良行(2008)『動詞・形容詞・副詞の事典』東京堂出版