持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古文理解と現代語訳(その2)

意味理解前訳と意味理解後訳 英語学習において和訳の果たす役割について、横山(1998)が指摘しているように*1、古文理解においても同様の役割を果たすのかどうか、考えてみたい。横山は学習者が理解過程で行う和訳を「意味理解前訳」、十分な理解のうえで行う…

古文理解と現代語訳(その1)

古文理解における現代語訳の位置づけ 古文を古文のまま理解しろ、というような主張はあまり耳にしない。漢文であれば素読などのような活動もあるのだろうが、古文では事情が違うようである。つまり、古文の理解において現代語の介在は不可欠なものと一般に考…

ウェブリング“English”からお越しの方へ

英語のブログのはずなのに、なぜ日本語なのか、しかもなぜ古文なのかと感じる方がいらっしゃると思います。これは大半の日本人が体験する言語学習を見渡し、そのなかで英語学習について考えていこうとする意図があります。外国語を1言語(主に英語)しか学…

古典文法と古文理解(その2)

古典文法の定義 そもそも、「古典文法」とは何であろうか。鈴木(1995)によれば、古典文法とは中学校や高校で扱われる古典語に関する文法であるという。ここで鈴木は「古典語に関する文法」と言っているが、これは古代日本語の文法を基盤として確立された文章…

古典文法と古文理解(その1)

古典文法の役割 古文の理解には古典文法の知識が必要であると一般に考えられている。金水(1997)は古典文法の役割について現代語文法と対比させながら次のように述べている。 学校文法に基づく古典解釈のメソッドが確立された結果、文法は完全に暗記の学問と…

日本語が読めれば、英語も読めるのか

日本語と英語の文章構成 田中(1989)の副題には、「日本語が読めれば英語が読める」と銘打ってある。伊藤(1995)は「文章の書き方に洋の東西でそんなに差があるはずはない」(113)という。この考え方を取れば、英語が読めるようになるには日本語と英語の最小…

カテゴリーを見直しました

いつも当ブログをお読みいただき、ありがとうございます。 当初は英語教育を中心に書いていたブログですが、最近は日本語/国語教育に関するものも多くなっています。このため、「日本語」という単一のカテゴリーに押し込んでおくわけにもいかなくなりました…

「評論文」とは何か(その3)

「評論文」は論理的なのか 受験現代文では「文章を論理的に読む」と言う。だが、その対象となる文章がどの程度論理的なのであろうか。西尾(1954)は、近代の文章では起承転結などの形式的構成法が排除されてきたと指摘している。そうした文章は近代の文章とし…

閑話休題:なぜ日本語なのか

講師室でのよくある会話から 「英語以前に日本語ができていない」ということをよく耳にする。はじめはこちらも同調して「まったくだ」とも思ったが、次第に考えが変わってきた。責任転嫁ではないかだと思ったからだ。日本語を介さずに、すべて英語だけで授業…

脱活用論(その3)

宮田幸一『日本語文法の輪郭』 宮田幸一といえば、英語を教えている人であればその名を知っている人が多いであろう。『教壇の英文法』(宮田1970)は、英語教師必携の書のひとつであると思う。その宮田(1970)を開いてみると、次のようなことが書いてある。 …

脱活用論(その2)

田丸卓郎『ローマ字文の研究』*1 日本語をローマ字で表記するだけなのに、なぜ文法が問題になるのかということを疑問に思う人もいるかもしれない。ふだんの我々の生活では、自分の住所や名前以外のことをローマ字で表記することがないが、もしまとまった文章…

脱活用論(その1)

ロドリゲス『日本語小文典』 一般的な活用論とは違った形で動詞などの語形を扱ったものとして、古いものではロドリゲス(1993)がある。これは1620年に、ヨーロッパ人学習者向けに書かれたものである。ここでは動詞をまず、現在時制・過去時制・未来時制・命令…

日本語文法の体系的知識(その4)

活用と助動詞・助詞 すでに見たとおり、学校文法の活用には問題点が多い。しかし、活用を見直すということは、助動詞や助詞をどう捉えるのかということと一体で考えていかなければならない(国立国語研究所1978)。つまり、学校文法で「語幹−活用語尾−助動詞…

日本語文法の体系的知識(その3)

「活用」について 国語の授業で学校文法を扱う場合に、必ず触れることになるのが活用である。しかし、現在の活用形は問題点が多い。この問題点について、奥津(1981)は3点指摘している。1つは、活用形の名称の問題である。例えば、「未然形」が表しているの…

日本語文法の体系的知識(その2)

「西洋語文法」の影響 ある受験現代文の講師は「現代文とは日本語で書かれた英語である」と言っていた。現代日本語の書き言葉は、それくらい外国語の影響を受けているのかもしれない。柳父(1981)は、日本語は土着のことばと外来の素性のことばとの二重構造を…

日本語文法の体系的知識(その1)

国語教育の本質 国語教育においていったい何を教えるべきかについては、いくつかの立場が考えられる。このなかには村上(2008)や高木(2008)のように、日本語文法の体系的知識を教育内容の中心に据えるべきという立場もある。この立場は、母語の言語技術の習得…

新年のご挨拶

皆様、あけましておめでとうございます。昨年は更新のペースが乱れてしまい、ブランクが開くことが多かったのですが、今年はより頻繁に更新できればと思っております。 本年も、何卒ご贔屓のほど、またご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。