持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

チャンキング文法とシラバス

統語知識の提示

リーディングにおいてチャンキングを行うに先立って、文法知識をあらかじめ提示するかどうかに関して、大学受験対策など、学習期間が限られていて、しかも学習者の母語がある程度完成している状況では、先行提示は有効であると考える。方法論自体は古典的である。統語知識を中心に提示し、それをもとに短文を利用してチャンキングの練習を行うというものである。つまり、文法項目ごとのチャンキング練習を行うわけである。これは授業形態が講義形式かインタラクティブか、1コマが何分かにもよるが、インタラクティブな授業形態であれば、14〜15時間、講義形式であれば、文法項目を厳選して3時間程度で講義したうえで、自習の方法を提示するといった時間配分が考えられる。

単一パラグラフの文章による実践

文法項目ごとのチャンキングを一通り指導したあとは、単一のパラグラフからなる英文を用いて、チャンキングによる理解を全文にわたって実践する練習を行っていく。このときは、文法項目の制限を設けないわけで、それまでの文法知識の定着を図り、チャンキング処理の自動化を図ることがねらいとなる。focus on formsからfocus on formに移行させる練習であるとも言える。
このときに、もともとパラグラフが1つしかない文章を利用するのもよいが、複数のパラグラフからなる文章を分割して利用し、後に行うパラグラフ・リーディングの練習の際に全体を通して再度利用するというのも有効な方法かもしれない。いずれにしても、この段階では連続した文理解の練習ということに意識を集中され、文脈への意識は学習者の中に自然に生じてくるのに任せることになる。チャンクの正しい理解が、文の正しい理解に至り、それがさらに文章全体の正しい理解に通じるということを体得させることが大切である。
この練習に費やす時間は、それほど多くなくてよい。教室で行うのは4〜5時間で十分である。この段階で自力で英文が読めるという実感がわけば、学習者は意欲的に英文を読むようになるだろうし、受験指導であれば、市販の英文解釈の参考書にある文章などを利用して、学習者が自ら読み進めていくことができる。このため講義形式の場合は必ずしもこの段階を授業で扱わなくてもよいと言える。

ということは・・・

個別指導や家庭教師などで時間がある程度自由に使える状況であれば、今月中にここまでの学習を進めることも十分に可能である。もちろん、指導する側の教材の準備が間に合えばの話ではあるが。ここで重要なのは統語知識の提示をいかに効率的に行うかである。既存の文型論のままではチャンキングには向かないし、wh-節に至ってはその仕組みを図示しておくなど理解を促すような工夫が必要である。しかし、そうした努力を教師が惜しまなければ、従来の予備校の授業などで通年で行ってきた「構文主義の英文解釈」で身につけた英語力が、より短期間で、しかもより実践的な形で身につけることができる。一度試してみる価値はあるといえる。