持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

漢文のその後など

漢文の基礎を学び直して気付いたこと

先日から、『古典漢文の基礎』(山本哲夫著、洛陽社)を少しずつ読んでいるが、冒頭部分がなかなか興味深い。漢字・漢語の基礎知識として、六書に触れ、書体の変遷にも触れ、次いで熟語の成り立ち、呉音・漢音・唐宋音にも触れている。ここまでが第一章で、第二章は文の基本構造と題して、基本的な語順に言及している。実は、私はこれまでにこのような根本的なことを漢文の授業で教わったことがなかった。古文の授業でも同じことが言えるのだが、国語の授業で統語を明示的に教わったためしがないのだ。もうひとつ、この本と同時に購入した学参があるので、導入部分を並行して読んでいきたいと思う。

詳解 漢文

詳解 漢文

また、今読んでいる中国語の入門書にも、漢文や日本の漢字への言及があり、そういうときに母語との比較対照が外国語の学習にとって方略的に必要なのだと改めて気付かされる。国語科教育の目標のひとつとして外国語学習の基盤を構築することが文化審議会の答申などでも挙げられている*1。その際の「外国語」とは英語だけではあるまい。中国語もしかりである。そう考えると、中国古典文学などを素材とする漢文や、漢文訓読から得た言語知識が日本語表現に取り込まれている過程を映し出す古文を学ぶことも、外国語学習の基盤作りに有効ではないかと思うのだ。日本語の歴史において意識的になれば、現代英語の豊富な語彙がラテン語などの諸言語の影響を強く受けているという事実も受け入れられやすくなるのではないだろうか。

*1:こちらを参照。