持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

漢文生活(続き)

『英文解釈教室』の「はしがき」から考える

現在私が出講先の予備校で担当している教材に英語構文を扱うものがあるが、これは『英文解釈教室』(伊藤和夫、研究社)の読解文法を扱う教材であると言える。その『英文解釈教室』の「はしがき」に「いわゆる公式がso . . . that=「非常に . . . ので」のように、漢文の摂取に見られた「外国語→日本語→事柄」という図式がある。」(pp.iii-iv)と述べられている。伊藤はこの方法を「根本的な倒錯がある」(p.iv)と批判している。確かに書店の漢文学参売場に行くと、今でも「漢文公式」という言葉を含むタイトルの学参が多く売られている。実際にそれでやさしい入試問題なら解けるようになるのであろうが、漢文が読めるようになるためだとか、ことばへの洞察を深めるためだとかといった学習には何の意味も持たない。

漢文法、もしくは古典中国語文法なるもの

漢文を入試突破のために解読すべき怪しげな暗号ととらえるのではなく、ひとつの言語体系ととらえることはできないだろうか。もちろん理論的にはできるはずだが、学校の授業として可能なのか考えてみたいのである。一つの方法として考えられるのは、漢文の白文を古典中国語(文言文法)の知識でとらえ、これを文語体の日本語、口語体もしくは言文一致体の現代日本語との三者で比較対照させるということである。漢文の参考書に「漢文の語順は英語に似ている」などという記述があるが、実際どこまで似ていて、どこから違うのかということを感じ取らせるようなことも、メタ言語能力を育成するには意味のあることかもしれない。そのまえに、私自身の中国語力を鍛え、中国語学を学べるレベルにしておく必要がある。やってみる価値はあると思う。