持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

PISAにおける「読解力」について

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PISAにおける「読解力」の定義

OECDPISA調査における「読解力」(reading literacy)は、次のように定義されている。

Reading literacy is understanding, using and reflecting on written texts, in order to achieve one's goal, to develop one's knowledge and potential and to participate in society.
(http://www.pisa.oecd.org/dataoecd/38/52/33707212.pdf)

この定義は解読(decoding)や文字通りの理解(literal comprehension)を超えたものであり、テクストの理解内容をさまざまな目的に活用することまで含んでいる。このため、従来国語教育*1で言われている読解力の概念とがずれがあることに注意しなければならない。

PISA型「読解力」の注目すべき点

町田(2006)は、読解指導の観点からPISA型「読解力」の注目すべき点を2つ指摘している。1つは教材の問題である。PISAで用いられているテクストは文章による「連続型テクスト」だけでなく、図表やグラフといった「非連続型テクスト」と呼ばれるものまで含まれている。この点について町田は文章に限らず多様な素材を国語教育に用い、「読むこと」のとどまらず「見ること」にまで教材開発の範囲を広げるべきではないかと提案している。2点目は前述の定義にかかわる問題である。町田は、読解指導の言語活動に単なる「読解」だけでなく「表現」の活動を含めて考えるできであると指摘する。受動的な読解から能動的な読解への転換が求められているというのだ。
だが、「読解」に「表現」がくっついたということだけがPISA型「読解力」の要点ではないだろう。それは「読解」そのものの問題である。「読み方」といった方がよいのかもしれない。町田は「見ること」という用語で「読み方」の多様化を示唆しているが、読解方略(reading strategies)を国語科教育でどう扱うべきかということも考えていくべきなのだと思われる。

参考文献

  • 町田守弘(2006)「新たな読解指導開発のために」田中孝一・町田守弘(編)『いま求められる読解指導開発マニュアル』月刊国語教育別冊.
  • OECD(2003) The PISA 2003 Assesment Framework. OECD.

*1:あるいは英語教育も含めて。