持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

高等学校学習指導要領における読解力について(その6)

平成11年改訂版

今回の改訂では、国語科の内容が「A話すこと・聞くこと」「B書くこと」「C読むこと」と〔言語事項〕の3領域1事項に改められた。高等学校の科目は必修科目が「国語表現I」「国語総合」のいずれかとなり、選択科目が「国語表現II」「現代文」「古典」「古典講読」となった。ここでは「国語総合」と「現代文」についてみていくことにする。
「国語総合」の目標は次のようになっている。

国語を適切に表現し的確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力を伸ばし心情を豊かにし,言語感覚を磨き,言語文化に対する関心を深め,国語を尊重してその向上を図る態度を育てる。

内容のうち、「C読むこと」の領域については以下のようになっている。

  1. 文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり,必要に応じて要約したりすること。
  2. 文章を読んで,構成を確かめたり表現の特色をとらえたりすること。
  3. 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。
  4. 様々な文章を読んで,ものの見方,感じ方,考え方を広げたり深めたりすること。

これに関連する「内容の取扱い」については、次のような留意事項も加えられている。

  1. 古典と近代以降の文章との授業時数の割合は,おおむね同等とすることを目安として,生徒の実態に応じて適切に定めること。なお,古典における古文と漢文との割合は,一方に偏らないようにすること。
  2. 文章を読み深めるため,音読や朗読などを取り入れること。
  3. 読書力を伸ばし,読書の習慣を養うこと。
  4. 指導に当たっては,例えば次のような言語活動を通して行うようにすること。
    1. 文章に表れたものの見方や考え方などを読み取り,それらについて話し合うこと。
    2. 考えを広げるため,様々な古典や現代の文章を読み比べること。
    3. 課題に応じて必要な情報を読み取り,まとめて発表すること。

また、教材の選び方についての留意事項も加えられている。

  1. 言語文化に対する関心や理解を深め,国語を尊重する態度を育てるのに役立つこと。
  2. 日常の言葉遣いなど言語生活に関心をもち,伝え合う力を高めるのに役立つこと。
  3. 思考力を伸ばし心情を豊かにし,言語感覚を磨くのに役立つこと。
  4. 情報を活用して,公正かつ適切に判断する能力や創造的精神を養うのに役立つこと。
  5. 科学的,論理的な見方や考え方を養い,視野を広げるのに役立つこと。
  6. 生活や人生について考えを深め,人間性を豊かにし,たくましく生きる意志を培うのに役立つこと。
  7. 人間,社会,自然などに広く目を向け,考えを深めるのに役立つこと。
  8. 我が国の文化と伝統に対する関心や理解を深め,それらを尊重する態度を育てるのに役立つこと。
  9. 広い視野から国際理解を深め,日本人としての自覚をもち,国際協調の精神を高めるのに役立つこと。

一方、「現代文」の目標は次のようになっている。

近代以降の様々な文章を読む能力を高めるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を深め,進んで表現し読書することによって人生を豊かにする態度を育てる。

内容は次の通りである。

  1. 論理的な文章について,論理の展開や要旨を的確にとらえること。
  2. 文学的な文章について,人物,情景,心情などを的確にとらえ,表現を味わうこと。
  3. 様々な文章を読むことを通して,人間,社会,自然などについて自分の考えを深めたり発展させたりすること。
  4. 語句の意味,用法を的確に理解し,語彙を豊かにするとともに,文体や修辞などの表現上の特色をとらえること。
  5. 目的や課題に応じて様々な情報を収集し活用して,進んで表現すること。

「内容の取扱い」として次のような留意事項が挙げられている。

  1. 話すこと・聞くこと及び書くことの言語活動を効果的に取り入れるようにする。
  2. 生徒の読書意欲を喚起し,読書力を高めるよう配慮するものとする。
  3. 近代の文章や文学の変遷については,文章を読むための参考になる程度とする。
  4. 指導に当たっては,例えば次のような言語活動を通して行うようにする。
    1. 論理的な文章を読んで,書き手の考えやその展開の仕方などについて意見を書くこと。
    2. 文学的な文章を読んで,人物の生き方やその表現の仕方などについて話し合うこと。
    3. 文章の理解を深め,興味・関心を広げるために,関連する文章を読んだり創作的な活動を行ったりすること。
    4. 自分で設定した課題を探究し,その成果を発表したり報告書などにまとめたりすること。
  5. 教材は,近代以降の様々な種類の文章とする。その際,現代の社会生活で必要となる実用的な文章も取り上げるようにする。なお,翻訳の文章や近代以降の文語文も含めることができる。