持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

高等学校学習指導要領における読解力について(その5)

平成元年改訂版

このときの改訂では国語科教育が言語の教育の立場に立ち、内容が2領域1事項からなることが踏襲されている。高等学校における科目編成は「国語I」「国語II」「国語表現」「現代文」「現代語」「古典I」「古典II」「古典講読」に再編されている。ここでは「国語I」と「現代文」に付いてみていくことにする。
「国語I」の目標は次のようになっている。

国語を的確に理解し適切に表現する能力を養うとともに,思考力を伸ばし心情を豊かにし,言語感覚を磨き,言語文化に対する関心を深め,国語を尊重してその向上を図る態度を育てる。

内容のうち、「B理解」の領域については以下のようになっている。

  1. 話や文章の主題や要旨を叙述に即して的確にとらえること。
  2. 話や文章の構成や展開に注意して,話し手や書き手の考えの進め方や強調点をとらえること。
  3. 話や文章の内容を必要に応じて要約したり詳述したりすること。
  4. 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。
  5. 話を聞いたり文章を読んだりしてものの見方,感じ方,考え方を広くし,人間,社会,自然などについて考えを深めること。
  6. 文章の内容や形態に応じた表現上の特色,文体の特徴などに注意して読むこと。

これに関連する「内容の取扱い」については、それまでにはない、「情報を選択し,整理する能力を身に付けさせること。」という留意事項が追加されている。また、教材の選び方についての留意事項も加えられている。

  • 教材は,古典及び近代以降の文章の中から生徒の発達段階に即して,適切な話題や題材を精選して取り上げるものとする。その際には,表現力と理解力とを偏りなく育てることをねらいとしながら,次のような観点に配慮する必要がある。
    1. 言語文化に対する関心や理解を深め,国語を尊重する態度を育てるのに役立つこと。
    2. 思考力を伸ばし心情を豊かにし,言語感覚を磨くのに役立つこと。
    3. 公正かつ適切に判断する能力や創造的精神を養うのに役立つこと。
    4. 科学的,論理的な見方や考え方を養うのに役立つこと。
    5. 生活や人生について考えを深め,人間性を豊かにし,たくましく生きる意志を培うのに役立つこと。
    6. 人間,社会,自然などに広く目を向け,考えを深めるのに役立つこと。
    7. 我が国の文化と伝統に対する関心や理解を深め,それらを尊重する態度を育てるのに役立つこと。
    8. 広い視野から国際理解を深め,日本人としての自覚をもち,国際協調の精神を高めるのに役立つこと。

一方、「現代文」の目標は次のようになっている。

近代以降の優れた文章や作品を読解し鑑賞する能力を高めるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を深め,進んで表現し読書することによって人生を豊かにする態度を育てる。

内容は次の通りである。

  1. 論理的な文章について,主要な論点と従属的な論点との関係を考え,論理の展開や要旨を的確にとらえること。
  2. 文学的な文章について,主題,構成,叙述などを確かめ,人物,情景,心情などを的確にとらえること。
  3. 目的や内容に応じた様々な読み方を通して,文章の読解,鑑賞を深め,人間,社会,自然などについて自分の考えを深めたり発展させたりすること。
  4. 文体,修辞などと内容との関係を考え,表現上の特色をとらえること。
  5. 語句の意味,用法を的確に理解し,語彙を豊かにすること。
  6. 文章や作品を読んで要約したり,感想をまとめたり,自分の考えを筋道を立てて話したり書いたりすること。

「内容の取扱い」として次のような留意事項が挙げられている。

  1. 文章の読解,鑑賞に当たっても,話したり書いたりする機会をできるだけ設けるとともに,聞くことについても指導するようにする。
  2. 生徒の読書意欲を喚起し,読書力を高めるよう配慮する。
  3. 近代の文章や文学の変遷については,作品の読解,鑑賞の参考になる程度とする。
  4. 教材は,近代以降の文章や作品とし,ある程度まとまったものを主として取り上げるようにする。なお,翻訳作品や近代以降の文語文も含めるようにする。