高等学校学習指導要領における読解力について(その4)
昭和53年改訂版
これに先立つ教育課程審議会の答申で、国語科では文学教育偏重ではなく、日常の言葉の能力や態度の育成に力点を置き、言語の教育の立場から表現力や理解力を育成することという方針が立てられた。その内容は小・中・高を一貫して「A表現」「B理解」と〔言語事項〕という2領域1事項からなるとされた。これに伴い、高等学校における科目編成も「国語I」「国語II」「国語表現」「現代文」「古典」に再編された。ここでは「国語I」と「現代文」について見ていくことにする。
「国語I」の目標は次のようになっている。
国語を的確に理解し適切に表現する能力を養うとともに,言語文化に対する関心を深め,言語感覚を豊かにし,国語を尊重してその向上を図る態度を育てる.
内容のうち、「B理解」の領域については以下のようになっている。
- 話や文章の主題や要旨を叙述に即して的確にとらえること.
- 文章の構成や展開に注意して,書き手の考えの進め方や強調点をとらえること.
- 話や文章の内容を必要に応じて要約したり詳述したりすること.
- 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと.
- 文章を読んでものの見方,感じ方,考え方を広くし,人間,社会,自然などについて考えを深めること.
- 文章の内容や形態に応じた表現上の特色,文体の特徴などに注意して読むこと.
- 朗読を通して文章の読解,鑑賞を深めること.
一方、「現代文」の目標は次のようになっている。
近代以降の優れた文章や作品を読解し鑑賞する能力を高め,ものの見方,感じ方,考え方を深めるとともに,進んで読書することによって人生を豊かにする態度を育てる.
内容は次の通りである。
- 論理的な文章について,主要な論点と従属的な論点との関係を考え,論理の展開や要旨を的確にとらえること.
- 文学的な文章について,主題,構成,叙述などを確かめ,人物,情景,心情などを的確にとらえること.
- 文章や作品の読解,鑑賞を通して,人間,社会,自然などについて自分の考えを深めたり発展させたりすること.
- 文体,修辞などと内容との関係を考え,表現上の特色をとらえること.
- 語句の意味,用法を的確に理解し,語彙を豊かにすること.
- 目的や内容に応じた様々な読み方を通して,文章の読解,鑑賞を深めること.
「内容の取扱い」として次のような留意事項が挙げられている。
- 教材は,近代以降の文章や作品とし,ある程度まとまったものを主として取り上げるようにする.なお,近代以降の文語文や翻訳作品を含めることを考慮する.
- 近代の文章や文学の変遷については,作品の読解,鑑賞の参考になる程度とする.
- 参考文献を適切に利用して,調べたことを文章にまとめて報告したり,討議したりする機会を適宜設けるようにする.