持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

リーディングストラテジー

キャッチーリーディング

予備校の英語には「○○リーディング」という、キャッチーなネーミングの読解法が教えられていることがある。特に単科講座や季節講習では、講座名と数行の紹介文で講座の概要を語り、受講生を引きつけなければならないために、こうしたネーミングが編み出されやすい傾向がある。だが、冷静に考えると、入試問題を解くのにそれほど特殊な読み方が必要なのだろうか。

読めない不安

予備校に通い始める時点での英語力が以前と比べて格段に低いものとなっている現在、英語が読めないという不安を抱えている生徒が多い。こうした状況では「○○リーディング」と銘打って煽られてしまうと、いかにも魅力的なものに感じてしまうのだろう。しかし、読解の基本は「普通に読めること」である。普通に読めることとは、リーディングストラテジー以前の次元の読みであり、左から右へ、上から下へ読み進めていくことである。予備校ではこうした読みを、「同時通訳派」だの「直読直解派」などとセクト化された呼ばれ方をするが、基本である以上、すべての学習者が身につける技能であろう。

リーディングストラテジー受験英語

読むという行為は、その目的によって方法を変えていくものである。入試においては、設問形式によって読み方を変えていくものである。しかし、「普通に読めること」という前提がなければ、読み方を主体的に選択するという悠長なことは言っていられなくなる。逆に、とばし読み的なストラテジーが使えなくても、語順通りに英文を読み進められれば、入試本番の解答時間内に解き終わらないということはない。1分間に80語程度の、音読並みの速度であれば、まったく問題はない。理解内容を記憶として保持できるようにノートテイキングなどに留意すれば十分である。こう考えると、受験生が今の時期に学ぶべきことは、意外に地味な内容なのではないかということになるのだが、当の受験生が気付いているのだろうか*1

*1:私が非常勤講師をしている高校の生徒には、この意識を持っている者がちらほら出てきている。だが悲しいかな、そうしたことをこれまでに学ぶ機会がなかったようである。