持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

量と質

コマ数が先か、教材が先か。

同じ受験対策でも、予備校と高校ではコマ数と教材の関係性に違いがある。予備校ではコマ数に合うような教材が制作される。これに対して高校では出来合いの教材を学校所定の単位数×週数に当てはめていく。予備校では当該講座の実情をよく知る立場の者がこの作業に当たるが、高校では必ずしもそうではない。こうした事情から、予備校では比較的進度に無理がない授業展開になるのに対して、高校の、とりわけリーディングの授業ではどこまで生徒の実情に合わせるか、またはどこまで無視するのか、という問題に悩まされることになる。

予備校の授業

私の出講する予備校も開講2週目に入った。高2向けのテキストは見た目の分量は少ないが、基礎から解説していく必要があるため、扱う情報量はかなり多い。それでも、1日1章というペースで進めて行けそうであり、生徒にしても予習がやりやすいと思う。高3のほうは初回にガイダンス的な内容も扱ったので、やや出遅れ気味となっている。制作者からは1日1章でなくてもよいと言われているわけだが、こうなると生徒の予習の範囲が定まらなくなる。高校の授業では授業中に生徒が考える時間もあるので予習が多少雑でも授業に参加できるのだが、予備校では講義を基本とする授業形態なので予習の質が問題になる。だから、次週の予習範囲をこちらで明確に指示しておく必要がある。

高校の授業

リーディングの授業では、MARCHクラスの入試問題を集めたテキストを使用している。生徒の学力差の大きいコースに配当されている科目で、授業計画で掲げられている標準進度とコース下位のクラスの進度には大きな隔たりがあると言わざるを得ない。予備校の授業では比較的短めの読解問題から配列してあるが、学校採用の教材は必ずしもそうではない。割り切って解法だけ扱ったとしても50分では収まらないし、学力下位層では解法に絞っても解法を支える言語知識が身についていないので、さらに時間がかかっていくのだ。このときにいたずらに進度確保に走ると、生徒は予備校のほうに向いてしまうことになる。もっとも、受験云々の前に英語Iや英語IIで基礎を固めておくことのほうが大事なのだが、そこでも生徒が消化できないほどの大量の教材漬けという状況に陥っている。どうしたものだろうか。