持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

開講日

黒板やマイクの話

高校の授業と予備校の授業の違いはいくつかあるが、その1つに黒板のサイズがある。予備校の黒板はとにかく横幅がある。高校の黒板の倍はあると思う。これは教室が大きいためであるのだが、同じくらいの収容人数があっても大学の教室とも違う。大学の黒板は横幅は抑え気味で2段になっていることが多い。しかし、大学の大教室と比べて予備校の教室は天井が低いので、縦の拡張ができないのだ。このため、生徒がどこまで実際に見ることができるのかを確認する必要がある。実は横幅が広くても、生徒の席によっては端の方が見づらい場合があるので要注意なのだ。
黒板に付きものなのが、チョークだ。これは学校にもよるのだが、高校よりも予備校のほうが色や種類が充実している。現在出講している予備校で驚いたのは、炭酸カルシウムのチョークと石膏のチョークの2種類が用意されていることである。私は石膏チョークを使うのが得意でないので、こういう心遣いは助かる。以前学内講座で行った大学で石膏チョークしか置いてないところがあって、思うように板書ができずに困ったことがあるくらいだ*1
予備校ではマイクを使う。浪人生相手の大人数の授業と違い、高校生相手の授業では開講時点での人数はそれほど多くはない。このためマイクを使う必要はないとも言えるのだが、これはモニターの意味合いもあるので使わないといけないことになっている。予備校で使うマイクはワイヤレスのピンマイクなので使い勝手がよい。困るのはワイヤードのハンドマイクだ。チョークまみれの教壇をコードが這っているため、コードは粉にまみれる。そのコードが足にまとわりついたりすると、ズボンが粉まみれになってしまうのだ。

高3の「ハイレベル」

デパ地下の天ぷら屋に行くと、超特大・特大・大という3つのエビ天が売っていることがある。受験の世界も似たようなものである。非常勤先の高校も最下位のコースが「選抜コース」である。確かに、入試で「選抜」したのだから嘘ではない。予備校の場合も「ハイレベル」という中下位クラスが設けられている。こうしたクラスの開講日では、学習法などの話に時間を割く必要がある。
予備校は解法を教えるところと考えられているようだが、知識として解法を提示するだけでは授業にはならない。解法は過程である。過程を意識させていくなかでさまざまな言語知識*2が関与する。その知識をどう学ぶのかという部分も、授業に盛り込む必要がある。これが「知識の運用」と「知識の獲得」という2つの柱となる。高校であれ、予備校であれ、受験指導ではこの2つの過程を生徒に意識させ、追実践させ、定着させていくことが必要なのだ。
文法の導入についてだが、予備校のテキストでも5文型の枠組みが扱われるのが一般的である。だが、高校で採用されているテキストのように、「S=C」などというような記述がないぶんだけ良心的である。また指定副教材がS+V/S+V+X/S+V+X+Xという枠組みで編集されているので、こちらも柔軟な扱いができる。今回は名詞+動詞+名詞という基本的な配列の文構造から、主語・目的語という文法関係を導入し、対応する日本語との語順の違いを意識させることから講義した。これらを純粋な文法関係ではなく、訳語と安易に結びつける指導が広く行われているが、日本語には動詞述語以外の文が存在することや、日本語における主語と主題の扱い、目的語に相当する日本語の助詞の扱いなど、問題点も多い。日本語のこうした点に着目すれば、「S=C」などと言う必要もなく、日本語の形容詞述語や名詞述語の文との対比でSVCの文型を土雲有すればよいのだ。日本語と比べるというのは、生徒からすれば安心感があり、かつ国語の授業では気付かない日本語の特質に気付くようになるので、副次的な効果も大きいと言えよう。

*1:弘法は筆を選ばずというが、私ごときにそのような言葉は烏滸がましいと、高野山に行ったときに思った。

*2:もちろん非言語知識も関与する。