持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

辞書よりも頭を使え!

「知識の獲得」と「知識の運用」

第2言語習得研究の世界ではskillだが、受験英語の世界では「知識」のほうがしっくり来ると思われる。テキストの予習のつもりで、辞書を引きながら必死になって発音問題を解いている生徒がいる。彼らはいつになったら辞書引きながら問題を解くことから脱却できると思っているのだろうか。そこでいつものように私は「知識の獲得」と「知識の運用」という2つの学習活動が必要である、というところから授業を始めた。前者はいかに多くの言語知識を身につけるかということが重要だが、後者は今ある言語知識でいかに効率的に言語活動を行うかということが重要となる。そして後者をより効率的に行うための知識があるとするならば、それを明らかにして身につけていけばよいのである。この段階は前者の活動となる。知識が強化されたら、効率化が図れたかどうか知識の運用を再度試みることで検証する。いわゆる英語教育学が受験英語と無縁だと考えられているようだが、この程度の折衷的なアプローチは必要であろう。受験英語=訳読=構造シラバスではない。「解法」や「学習法」という言葉に象徴されるように、受験英語はタスクシラバスなのである*1

気づきと思考

リーディングの授業では、「読める」という実感が持てない生徒を、どのようにして「読める」というリアルな達成感を感じさせてあげられるか、を中心的なテーマにしている。これに加えて、受験英語だから「解ける」という実感も同時に感じて欲しいが、少なくとも夏休み前までは読まずに解ける問題には触れさせないようにできればと思っている。そのときにどこに着目すれば理解のヒントが得られるのか、という意識化を図っていくことが必要になってくる。それは統語知識かもしれないし、文文法でも意味論的な側面かもしれない。その意味知識は文理解のための知識であるかもしれないし、テクストの結束性や統括性を捉えるトリガーとなるものかもしれない。あるいは語彙知識が文章理解に何らかの貢献をするのかもしれない。そういう意識を生徒に持たせたいし、そこに関与する知識を提示し、定着を図りたいと思う。

*1:日本では「タスク」がままごとに矮小化されているようだが、本来はもっと広い概念のようです。