持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

例文暗記

死んだ知識と生きる知識

例文暗記は高校でも小テストネタとして行われることが多い。だが、その多くの場合、丸暗記に陥っていることが多い。丸暗記では応用が利かない。見たことある文では暗記した知識が有効に作用するのかもしれないが、見たことない文であればお手上げである。さらに、生徒の能力を過小評価し、「このレベルの生徒には考えさせても無駄だから」といい丸暗記を推奨する向きもあるようだ。
逆である。センスがいい学習者は丸暗記の中で法則性のようなものに気付き、丸暗記からでも応用性を引き出すことができるのだ。センスがない者は頭をフル回転させて考えるしかないのだ。それをやる気がないから覚えられないなどと根性主義で一蹴するのは言語道断である。その点、駿台八王子校でクラスリーダーが生徒にやらせている、『英作文基本300選―英語的発想の日本語をヒントにして覚える (駿台受験シリーズ)』を利用した小テストのほうが優れている。もっとも私が直接関与してるわけでなく、生徒たちは丸暗記から脱却できているわけではない。だが、テスト後質問に来る生徒もいるし、この本自体に適度な文法解説が施されているので読むだけでも文法的思考を身につけることができるであろう。
一方、高校の生徒には『パターンで覚える英作文頻出文例360 (大学受験スーパーゼミ徹底攻略)』を紹介している。同じ著者の新著であり類似したコンセプトの本であれば新しいものの方がよいと考えたからだ。また、文法全体を俯瞰する読み物的な文法書として『絵で英文法』を紹介したが、統語形式に習熟する読み物はいいものがないので、プリントで配布することにした。『実践コミュニケーション英文法』の考え方を文法全範囲に広げたような感じのもので、駿台千葉・横浜校で担当している「高2ハイレベル英語」で配布しているプリントも同様のコンセプトに基づくものである*1。私がかかわる生徒には、是非とも文法的思考を身につけ、英語の言語活動に役立てて欲しいと思う。

*1:ただし、高校では授業進度の関係で配りっぱなし。駿台では1週1項目なので十分な解説を行っている。このあたりが高校の受験指導と予備校の受験指導の差となる。