高等学校学習指導要領における読解力について(その2)
昭和31年改訂版
これは昭和26年試案中のものを改訂したもので、教科内の科目編成を「国語(甲)」「国語(乙)」「漢文」として整理した。このうち「国語(甲)」が必履修科目で、「国語(乙)」「漢文」は分化、発展させたものである。
「国語(甲)」では次のような目標が設定されている。
言語文化を広く深く理解できるように,読解力を豊かにし,特に鑑賞力や批判力を伸張させることが重要であり,その読解の範囲も,現代文と並んである程度,古文や漢文にまで拡充きせる。これとともに,現代の国語生活に対する適応や改善ができるように,いっそう的確に効果的に,ことばを使用しうる能力や態度を養うことに留意する。なお,以上のことに連関して,ことばの理解や表現をよく意識して正確なものとするために,また現在および将来にも必要な国語の教養を高めるために,各種の言語知識を身につけさせる。
読解力、とりわけ鑑賞力や批判力を重視していることがうかがえる。そして読むことの学習の材料としては、「詩歌・随筆・小説・戯曲などの文学作品や,論説・評論・解説・報道・報告・記録など」を扱うこととされている。
昭和35年改訂版
このときの改訂では「現代国語」という科目が新設され、これと「古典乙?」または「古典甲」が必履修科目とされた。このほかに選択科目として「古典乙?」が設けられている。
このうち「現代国語」の目標は次のようになっている。
- 生活に必要な国語の能力を高め,言語文化に対する理解を深め,思考力・批判力を伸ばし,心情を豊かにして,現代の言語生活に適応できるようにし,それを改善しようとする態度や習慣を養う。
- 明確に思考し,誠実で民主的な態度で,生活のいろいろな場に適応して,聞いたり話したりできるようにする。
- 目的や形態に応じて読むことの能力を身につけ,文章の主題や要旨を正しく読みとり,ものの見方,感じ方,考え方を深めるようにする。
- 目的や場に応じて,思想や感情を,正しく効果的な文章に書き表わすことができるようにする。
- ことばのはたらきを広く理解し,国語に関する知識を確実に身につけるとともに,国語への関心や自覚を深めて,国語を尊重し,その発展に努める態度や習慣を確かにする。
科目の内容のうち、「読むこと」については次のようになっている。
- 次の事項について,指導する。
- 目的に応じて,各種の書物を選んで読み,教養を高める態度を身につけること。
- 必要に応じて,各種の参考文献を適切に利用する態度を養うこと。
- 文章を読んで,主題や要旨をつかみ,また,人生や社会の問題について考えを深めること。
- 意図や発想と表現の関連に注意しながら読むこと。
- さまざまな文体にふれ,それぞれの表現の特色を理解し鑑賞すること。
- 文章の論理的な構成を理解し,論拠を明らかにしながら,その論旨をつかむこと。
- すぐれた文章表現を読み味わうことによって,ことばに対する感覚を鋭くすること。
- 作品中の人物の性格,心理,思想,また,作者の想像力やものの見方,感じ方,考え方などを読みとり,それらについて意見をもつこと。
- 当用漢字がじゅうぶんに読めること。
- 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
- 記録,報告などを読む。
- 説明,論説,評論などを読む。
- 詩歌,随筆,小説,戯曲などを読む。
- 指導にあたっては,次の点を考慮する。
- 教材は,明治以降のものとし,生徒の理解や興味,関心や,現在および将来においての必要などを考慮して,適切で価値のあるものを広く選ぶ。なお,翻訳された文章をも含む。
- 文学作品の指導は,片寄ったり,狭くなったりしないように注意する。また,作者ならびに作品の背景などの扱いは,作品の読解を基本にして,それに参考になるようにする。