持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

書くことと言語意識

見てるだけでは不十分

文法知識を身に付けるには、「分かって、使って、感じ取る」の3つの段階を経ることが重要だと考えている。「分かる」とは言語知識を理解することである。文法は形態統語的な形式に関わる知識、意味に関わる知識、語用論的な文脈や場面に関わる知識の3つの側面から理解する必要がある。ただし、3つの側面すべてを理解してから「使う」の段階に行く場合と、どれか1つに特化した学習手順を踏み、それを3巡させて進めていく場合の2つのやり方が考えられる。次の「使う」とは理解した文法知識を実際の言語活動で使うことである。ここで最も効果的なのが「書く」という活動である。最近は入試の文法問題に対応するために「ライティング」の授業で文法問題を解かせることが私立高校を中心に一般的になっているが、本来のライティングの授業の方がよほど文法力が付くのではないかというのが、「ライティンG」の授業を実際に担当して感じたことである。

段階的和文英訳の可能性

我々は英語を学ぶときに英語の言語知識に対応する日本語知識を探し、対応づけようとする傾向がある。これが過度に行われると、英語が適切に使えなくなることがある。どこが同じでどこが違うのかという、英語と日本語と適切な「距離感」をつかむには、和文英訳を行うのも一つの方法だと思う。従来の和文英訳学習では、英訳用の日本語を一定のレベルに保つ代わりに例文暗記を学習者に要求することが多かった。これは、結局のところ、英文和訳や和文英訳を同じ素材を使って繰り返すうちに結果的にその素材を記憶しているということであろう。これも確かに重要なことではあるが、もう少し、手を動かすエクササイズが必要であるように思う。現状では、見ているだけの学習活動が、あまりにも多すぎるのだ。