持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

実録・大学受験の読解指導

構文派とパラリー派の狭間で私の選択

前にも書きましたが、私は受験英語における「構文派」と「パラリー派」という対立軸そのものがおかしいと考えています。日本人が母語である日本語とは体系を著しく異にする英語で文章を読もうとする場合、語順を中心とした文法知識への習熟は不可欠です。このため、私の授業でも「読解文法」と称して文文法の知識の学習から読解の授業を始めます。その上で、パラグラフの仕組みにも習熟させ、スキャニング、スキミング、要約の3つのスキルを身につけるところまでを前期授業の目標としています*1

読解文法の指導

読解文法は、名詞と動詞の2つの品詞が織りなす基本語順から入ります。動詞を軸に左側に名詞、右側にも名詞を配した語順が英語の基本であることに気づかせます。そして対応する日本語と並べて示し、日英語の語順の違いを意識させます。このあたりは、ある程度英語ができる生徒には当たり前すぎることかもしれませんが、これを意識させると、文章中で未知の単語が出てきても、名詞か動詞かそれ以外の品詞かという判断ができ、その上で前後の文の意味から単語の意味を推測することを容易にする効果もあります。
動詞の左側の名詞が「主語」、右側の名詞が「目的語」であり、文の中枢を担う動詞が「述語動詞」であるという用語の確認を済ませたら、文型の導入に移ります。ここでは動詞と文型の対応関係に着目させます。こうすることで、述語動詞になっている動詞の意味から後続するパターンを予測することが可能になり、順送り理解がより容易になります。文型の指導と平行して形容詞と副詞の導入も行って、「基本4品詞」の重要性を理解させます。
文型のあとは、「名詞のまとまり」「形容詞のまとまり」「副詞のまとまり」という大きな3つの項目に収斂させた文法項目を扱っていきます。どんなに長い文でも基本4品詞のうちのいずれかの働きをするまとまりが連鎖したものと考え、そのまとまりごとにスラッシュを入れて英文を断片化できるような練習を課していきます。この練習は従来の英文解釈と同様の短文で十分と考えます。

文章を使った練習

文法知識を使って1文ごとの理解ができるようになってきたら、1パラグラフで完結するような短い文章を使って、全体を通して読む練習を行います。この際には、スラッシュを入れて断片化したまとまりごとに意味を理解するように意識させます。最終的にはサイトトランスレーションに至るのが望ましいのですが、授業中1〜2度練習したら、家でも練習するように支持します。これは次の授業の時に反復の成果を確認することが必要です。ここで重要なのは、文法知識を完全に頭に入れてから練習するのではなく、ある程度文法を理解したら、練習に取りかかり、練習しながら文法知識を確実にしていくようにするということです。

スキャニングの練習

短い文章を通しで読めるようになってきたら、そうした短い文章を素材とした入試問題や英検の過去問などを利用してスキャニングの練習をしていきます。このときの試験問題は推論や要約を要求する設問ではなく、単に事実を読み取ることを要求しているものを使うようにすることが肝心です。

パラグラフの仕組み

パラグラフの仕組みやトピックセンテンスの捉え方を教え、それに基づいて要約やスキミングの練習をしていくのがこの段階です。この段階では単一の「文」ではなく、まとまった「文章」を扱うわけですが、文レベルの理解ができないと、トピックセンテンスを見つけても理解することができません。文を理解する力はこのあともずっとついて回るのです。このことは、逆に言えば文法力不足でせっかくのトピックセンテンスが理解できない場合には、文法力の補強をその都度宿題などで課せばよいということにもつながってきます。
この段階になると、複数のパラグラフからなる文章を読み解くことになります。共通一次試験や初期のセンター試験の問題などで演習を重ねるのと同時に、引き続きひとパラグラフの文章を使いながら要約の練習も行っていくようにします。こちらも慣れるに従って複数のパラグラフの文章に移行していきます。要約の練習を経験するとスキミングが容易になり、読解問題を解くときの効率と正確さが断然違ってきます。

より実践的な演習

読み方を定着させる段階での問題演習では、入試問題を扱うにしても選択肢で答える問題よりも記述式の問題の方が効果的です。たとえ全問マークシート方式の大学しか受験しない生徒に対しても、自分で内容を書き出したりまとめたりする訓練をしない限り、勘で適当に選択肢を選ぶという悪い癖から抜け出せません。こうした癖があるうちは入試で安定した得点を確保することができません。

復習へのサポート

授業で使った文章は復習の際には、全文を通しでくりかえし読むことで、文法や語彙の知識を補強していくことになります。こうした学習活動をサポートするには、語彙に関しては語形成の情報を添えたりして語義が頭に残りやすくし、文法に関しては授業で扱った文章の文を文法項目ごとに配列したプリントなどで、生徒が苦手とする文構造に少しでも早く習熟できるように支援していきます。

*1:それぞれの理論面でも私の考えについては過去の記事の随所で触れています。