持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

語源のことなど

どこまで必要なのか

英単語は語源を手がかりに覚えるとよいなどと言われる。だが実際どうだろうか。少なくとも、初学者向けの学習法ではない。小学生や中学生がdogやcatの語源の知識がなければこれらの語彙が身につかないなんていうことはありえない。大人はどうか。ここも釈然としない。学ぶべき語彙知識がきちんと整備されているようには思えないのである。共時的には派生形態論とか語形成と呼ばれる領域の知識が絡んでくる。だが生成文法の枠組みでの形態論では形態素を有意味な単位とは考えないのが普通である。ここで語形成規則に、いわば魂を吹き込むのが語源学的知識である。とはいえ、語源学にはラテン語ギリシア語、フランス語など、英語以外の言語の知識も必要になる。このため語源の知識が過剰になれば、学習者の負担はかえって大きくなってしまう。

とりあえず言語事実を把握する

学習文法一般の定石通り、言語知識の記述と提示を分けて考えようと思う。まずは記述である。一般の辞典でも、ある程度の規模のものになると語源の記述が充実してくる。

岩波英和大辞典

岩波英和大辞典

ただし、この手の辞書の語源表記は複雑な記号が使われていたりで、慣れるまでは使いにくい。語義の理解の助けになるようにという趣旨で、文章の形で語源解説をしている辞書がある。
英語語義語源辞典

英語語義語源辞典

この辞書の語源解説は意味の変化を中心に扱っており、語形の変化は最低限にとどめてある。語形の変化も知りたいとなると、もう少し本格的な語源辞典が必要となってくる。
英語語源辞典(縮刷版)

英語語源辞典(縮刷版)

こうなってくると、英語史についてもう少し学びたいと思うわけで、読みやすそうなものを何点か目を通すことになる。
英語発達小史 (1982年) (岩波文庫)

英語発達小史 (1982年) (岩波文庫)

英語発達史 [改訂版] (岩波全書セレクション)

英語発達史 [改訂版] (岩波全書セレクション)

英語の歴史 (講談社現代新書)

英語の歴史 (講談社現代新書)

英語史 (1980年) (文庫クセジュ〈466〉)

英語史 (1980年) (文庫クセジュ〈466〉)

こうしてみると、昔の英語学者は幅広い知識を持っていたんだなと、改めて驚かされる。そして、こうした知識に触れていると、ラテン語をしっかり勉強しないといけないなという思う。ただ、語源の知識をどのように提示すれば語彙の習得と運用に効果的なのかは別の話である。知ってる専門知識を羅列して高級感だけを醸し出すような授業になってはならない。