持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

英語−文法

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その7)

Chapter 2 動詞と文型(その3) p.15の3.にある「There is/are・・・で始まる文」ではまず、〈存在〉を表す文の3つのパターンを取り上げている。現在執筆準備中の学習書にはhaveも取り上げる予定だが、本書ではここでbeを使った文のみを取り上げている。実…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その6)

Chapter 2 動詞と文型(その2) 本書の文型論は、S+V、S+V+X、S+V+X+Xという3文型を出発点とし、動詞に後続するXにどのような品詞が続くかによって従来の5文型の枠組みで扱われている諸文型をネットワーク化したものである。そのうえで、文型は主に動…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その5)

Chapter 2 動詞と文型(その1) 阿部・持田(2005)では大学教科書という性質上、文型を網羅的に扱うのではなく、学習が比較的困難と思われるところを重点的に扱った。しかし、文型を学習する過程における困難は学習者によってさまざまであり、また今回は高校…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その4)

Chapter 1 英文の基本構造(その3) 3.2.の副詞のところのベースは1990年代後半の中学英語教科書、とりわけ中3教科書の巻末の基本文リストにある。つかみどころのない印象のある副詞を、中学レベルで触れる英語から典型的なものを押さえておこうと考えた。1…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その3)

Chapter 1 英文の基本構造(その2) 3.1.「名詞のまとまりの展開」では冒頭に人称代名詞の表を示してある。この表は一般的な「I−my−me−mine」という配列にはなっていない。1990年代に『英語教育』で連載されていた「英語のカリキュラム」(通称「若林・手島…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その2)

Chapter 1 英文の基本構造(その1) 1.1.の「主語と述語」と1.2.「述語の仕組み」のところは、一般的な英語総合の参考書などと比べて記述内容に大きな違いはない。「述語の仕組み」のところでは、「英語の述語には動詞が必要です」(p.6)とあっさりと言い…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その1)

Introduction 英語の構造規則と英文理解への応用 本書は一般的な大学受験向け学習参考書と同様に、明示的な文法学習を支援する立場をとる。そしてそこで扱う文法知識は、Larsen-Freeman(1991)のいうFORM/MEANING/USEの3つの次元から捉えるように努めている。…

『良問でわかる高校英語』と『実践コミュニケーション英文法』

2冊を組み合わせて活用することについて 拙著『良問でわかる高校英語』は高校生向けの参考書であり、阿部一先生との共著である『実践コミュニケーション英文法』は大学教科書です。位置づけとしては両者は異なりますが、2冊を組み合わせて授業等で活用するこ…

facebookページ2月5日付更新のための文法書ガイド

ご案内 私のfacebookページ「言語教育・持田哲郎(家庭教師・授業・講演・教材執筆)」で触れた、英文和訳・和文英訳のエクササイズのための例文集として、現時点でお勧めのものをここに挙げておきます。英作文基本300選―英語的発想の日本語をヒントにして覚…

facebookページ2月3日付更新のための文法書ガイド

ご案内 私のfacebookページ「言語教育・持田哲郎(家庭教師・授業・講演・教材執筆)」で触れた、ESLの英文法学習書として、現時点でお勧めのものをここに挙げておきます。English Grammar in Use with Answers and CD-ROM: A Self-Study Reference and Prac…

facebookページ1月31日付更新のための文法書ガイド

ご案内 私のfacebookページ「言語教育・持田哲郎(家庭教師・授業・講演・教材執筆)」で触れた、英文法書を読み込む学習のための、現時点でお勧めの組み合わせをここに挙げておきます。完全マスター英文法作者: 米原幸大出版社/メーカー: 語研発売日: 2009/…

呟きに登場したブックリスト

ご案内 この何日かの私のtwitter(@ownricefield)での呟きで言及した本を挙げておきます。英作文における日本人的誤り作者: 松井恵美出版社/メーカー: 大修館書店発売日: 1979/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る日本文法 口語篇 (岩波全…

学習書リストについて

リストの趣旨 この数日にわたってこのブログに挙げた学習書リストは、facebookページ「言語教育・翻訳・著述 持田哲郎」で大学受験生向けに提案している学習法を実践するときに適した学習書を現在入手可能なものの中から選んだものである。 学習法の概要 日…

受験生のための英語学習書ガイド(その3)

日英語の比較対照のための学習書 英作文なんかこわくない 日本語の発想でマスターする英文ライティング作者: 猪野真理枝,佐野洋,馬場彰出版社/メーカー: 東京外国語大学出版会発売日: 2011/04/15メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 10回こ…

受験生のための英語学習書ガイド(その2)

読み切り文法学習書 中1英語でつまずかない18のポイント作者: 岡田順子出版社/メーカー: 文芸社発売日: 2013/09/01メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る英文法の疑問 恥ずかしくてずっと聞けなかったこと (生活人新書)作者: 大津由紀…

受験生のための英語学習書ガイド(その1)

文法書(複数を併用することをお勧めします) たのしい英文法 改訂版作者: 林野滋樹+改訂版編集委員会〈改訂版編集委員〉代表 奥西正史委員 瀧口 優 柳沢民雄〈改訂版編集協力〉吉浦潤次 山口良子 竹内一浩 保坂芳男出版社/メーカー: 三友社出版発売日: 2011…

教室英文法の試み(その5)

述語動詞と準動詞 学校英文法でいう「述語動詞」と「準動詞」は、言語学で一般に使われる「定形動詞」と「非定形動詞」の概念にほぼ対応する。定形動詞が英語にあって日本語にないものであるならば、日本語では定形動詞と非定形動詞の区別がないことになり、…

教室英文法の試み(その4)

英語の文における「時制」の重要性 「教室英文法の試み(その1)」で、「主語とテンスが英語の文を成立させるために必要なものということになる。」と述べたが、このテンスの必要性というのは、英語(を含むヨーロッパの言語)に限られたことなのか、それと…

第3回町田研究室修了生研究会発表資料

2013年7月20日に研究室のOBOGによる研究会で発表しましたので、ハンドアウトの本文を掲載いたします。 「グローバル化」と国語教育・英語教育 教育再生実行会議の提言 昨年末に政権が交代して以来、「成長戦略」という言葉を頻繁に耳にするようになった。教…

教室英文法の試み(その3)

日本語と英語の文型 日本語の基本文型を考えた場合、まず動詞文、形容詞文、形容動詞文、名詞文に分けることができる。(黒田1980, 菅井2012)英語との対照で問題となるのは述語になることができる品詞の違いである。上述の通り、日本語では動詞、形容詞、形…

教室英文法の試み(その2)

主語と主題 英語の文では主語は原則として主題となる。綿貫他(1994)はこのことについて次のように述べている。 英語の文には原則として主部と述部がある。主部はふつう、その文の主題となっている部分であり、述部はその主題に対して説明している部分である…

教室英文法の試み(その1)

はじめに 今回から何回からにわたって「教室英文法の試み」と題したエントリーを展開していきます。私が出講する予備校の授業の予習の段階で整理した知識の一端をご紹介しようと思っております。 英文の基本構造:S+V…ということ 山崎(1971)には文の定義が…

グループワークの方法

文法教育とグループワーク 従来の文法教育は教師が文法体系を学習者に対して明示的に提示することと、教師によって提示された文法体系を学習者が暗記することが大きな柱であったといえる。これに対してメタ言語能力の発達を促進するための文法教育では、学習…

帰納的文法教育における参加型学習

文法教育と参加型学習 文法教育の授業のあり方を教師と学習者との関係からみてみると、参加型学習にも言及しておく必要がある。先行実践としては、原沢(2006)が日本語教育に関心がある者への文法教育に参加型学習を取り入れている。参加型学習は開発教育にお…

帰納的文法教育における発見学習

文法教育と発見学習 帰納的な文法教育とは学習者中心の文法教育である。桑原(2010)は、単元学習の立場を学問体系を教科の知識として教師が学習者に教え込むのではなく、学習者の側から学習者の生活を見据えながら学習活動の組織・指導を行う立場であるとして…

私の英文法指導歴(その3)

はじめに ひき続き、id:anfieldroadさんの「『英語教育ブログ』みんなで書けば怖くない!」の第2回「英文法指導」に参加するために書いています。 「受験英語」から距離を置いて考えたこと 英和辞典の執筆や校閲に携わる機会を得て意識したのは、日本語を母…

私の英文法指導歴(その2)

はじめに ひき続き、id:anfieldroadさんの「『英語教育ブログ』みんなで書けば怖くない!」の第2回「英文法指導」に参加するために書いています。 語順提示の探究 学部4年の1996年、『英語教育』で大場昌也先生による「新しい学校英文法のための5つの提案…

私の英文法指導歴(その1)

はじめに このエントリーは、id:anfieldroadさんの「『英語教育ブログ』みんなで書けば怖くない!」の第2回「英文法指導」に参加するために書いたものです。 大学学部時代 私は、大学受験が終わると、学部入学前の1993年3月から個別指導塾で英語を教えるよ…

私の立場(その4)

意外に抜け落ちている視点 日本語を母語とする英語学習者のための英文法という位置づけで教育文法を考えた場合、当然ながら、学習者の母語は日本語でEFL環境で英語を学ぶという前提に立つ。しかし、ここには意外に見落とされている視点がある。それは、日英…

私の立場(その3)

英語学習にとってコアとは何か まず、拙ブログで過去にコアについて論じているので、そちらのご紹介。 http://d.hatena.ne.jp/ownricefield/20080317 http://d.hatena.ne.jp/ownricefield/20080320 http://d.hatena.ne.jp/ownricefield/20080322 そして、私…