持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その7)

Chapter 2 動詞と文型(その3)

p.15の3.にある「There is/are・・・で始まる文」ではまず、〈存在〉を表す文の3つのパターンを取り上げている。現在執筆準備中の学習書にはhaveも取り上げる予定だが、本書ではここでbeを使った文のみを取り上げている。実はこの箇所は阿部・持田(2005)でも当初は取り上げる予定であったが、全体の構成に照らし合わせて最終的に削除している。これらの3つの文は生成文法ではそれぞれ別の基底構造を想定していることが多いが、本書では不定名詞句の右方移動によって空になった文頭の位置にthereが挿入されたという「成り立ち」を提示している。これは教育文法に「変形」を持ち込む目的を新たに学ぶ統語構造を学習者にとって既知の統語構造と関連づけるためであると筆者が考えているからである。
このthereの扱いについて、品詞については深入りすることを避けた。またthereの意味については阿部(1998)などの解説を参考にしている。名詞句につく冠詞類の扱いについては、富岡他(2008)などでも言及している情報構造に軽く言及しつつ、ここでは「新情報」や「旧情報」の定義はせずに、萩野(1998)に従って簡潔な説明にとどめた。

参考文献

  • 阿部一(1998)『ダイナミック英文法』研究社出版
  • 阿部一・持田哲郎(2005)『実践コミュニケーション英文法』三修社
  • 萩野俊哉(1998)『ライティングのための英文法』大修館書店
  • 富岡龍明・堀正広・田久保千之(2008)『ライティングのための英文法ハンドブック』研究社