持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

学習書リストについて

リストの趣旨

この数日にわたってこのブログに挙げた学習書リストは、facebookページ「言語教育・翻訳・著述 持田哲郎」で大学受験生向けに提案している学習法を実践するときに適した学習書を現在入手可能なものの中から選んだものである。

学習法の概要

  1. 日本語を手掛かりとした英文法の仕組みの理解
  2. 理解した知識を踏まえた上での例文暗記
    1. 理解した知識を踏まえたうえでの英文の声だし
    2. 理解した知識を踏まえてうえでの英文の書き写し
  3. 理解を深める問題演習
    1. 英文和訳
    2. 和文英訳
    3. 整序問題
    4. 正誤問題
    5. パタン・プラクティス
    6. コンビネーション・プラクティス

日本語も英語も人間が使う言語である以上、対応するところがまったくない別の仕組みを持っているということはあり得ず、根底のところで共通の仕組みが存在する。しかし、同時に日本語と英語で違うところもあるのも事実である。日本語を母語とする我々は、日本語と英語がどこが同じでどこが違うのかということへの気づきを重ねながら外国語である英語の文法を学んでいく。日本語母語話者は、日本語をふだん意識することがないため、日本語を分析することは容易ではない。このため、英文法の学習ではまず、日本語を意識することから始める必要がある。教師と学習者が日本語という母語を共有する教室では、日本語から逃れることはできない。英語だけで授業をしても、頭の中では日本語がうごめいているのである。母語とはそういうものなのである。
文法知識のとりあえずの理解ができたら、それを例文で確認していく。例文のどの部分が今学んでいる文法現象なのかを目で見て確認するのである。このときに文全体の構造を把握するようにすると、今焦点を当てるべき文法現象がどこに生じているのかが明確になる。意味や使い方の分からない単語は辞書で調べて確認する。例文の多くは日本語訳がついているので、自分で訳して、示された日本語訳のようになるのか確認していく。このときに「この英語と日本語は本当に同じ意味なのかな?」「この意味なら違う英語で表現できそうだけど、どう違うのだろう?」など、さまざまな疑問がわいてくる。こうした疑問を解決する手段は3つ、辞書や参考書の参照、友達との話し合い、信頼の置ける教師への質問である。この「確認」の過程で「あっ、そうなのか」「なるほど!」といった気づきがいくつも得られる。この「気づき」がことばを使えるようになるには大切なのである。
「声出し」では、上記の「確認」で理解した例文の仕組みが自分の音読に反映されていくか確認していく。逆に、とりあえず声に出してみて、「本当にこの読みでいいのかな?」という疑問がわいて「確認」に戻ることもありえよう。「声出し」は実際に話すことの疑似体験であるから、例文がどのような文脈・場面で使われるのだろうかと考えて、それを踏まえた音声化を心がけることも大切である。5W1Hのような自問自答をするとよい。「声出し」は初めのうちは例文を見ながら発音していきますが、Read & Look Upという、まず文を見て、声に出す時には顔を上げて「話す」やりかたに移行するようにしていく。
「筆写」の場合は、初めから「英文を見る→書き出す」という流れになり、「声出し」のように元の例文を見ながら同時に、ということはできない。しかし、そのぶんだけ例文をしっかり見ることができる。上記の「確認」で出てくる疑問は「筆写」の最中に出てくることが多いであろう。そうした場合は書く作業を中断してでも疑問の解決を優先させるべきである。疑問の解決をおろそかにすると丸暗記に陥ってしまう。「筆写」をしながら「声出し」を試みるのもよい。「こういう仕組みになっているから、こう読むのだな」と確認しながら音声化できる。「筆写」の場合も徐々に元の文を見ないで書く「暗写」ができるようにしていく。ただし、丸暗記ではないので、暗写や暗唱を急ぎすぎなうようにすることも重要である。
言語知識の理解は、原理的な説明と実際の言語現象、すなわち例文とを行ったり来たりしながら得られるものである。説明を読んだり聞いたりしたことを、例文で確認する。逆に例文を見ていて気づいた「仮説」を、説明を読んだり聞いたりして「検証」する。このようにして理解は生まれていくのである。つまり、説明を文法書や辞書で読んだり授業で聞いたりしただけで理解できるというよりは、それを自分で例文に当てはめたりしていくなかで理解できるということである。したがって、「原理の理解→例文暗記」という単純な図式ではなく、実際には理解と例文の記憶は同時進行となることが多く、理解ができたと思って例文暗記に進んでも再び原理の理解に戻るということも普通のことなのである。