持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2005-01-01から1年間の記事一覧

訳読からリーディングへ①

今日も訳読について論じていきます。 訳読は本当に訳読だったのか? 文法訳読法は英語ではGrammar Translation Methodという。translationには「翻訳」という訳語が当てられることもある。「訳読」と「翻訳」の違いについてはすでに述べたとおりである。 松…

言語学者による英文解釈本

従来の受験英語のための英文解釈とは微妙に違う。英文を理解するための道具立てとしてしばしば理論言語学の知見が出てくる。訳読の可能性というものをふと考えさせられる1冊である。

一読の価値のある翻訳論

端的に言うと、単なる英文和訳に成り下がっている翻訳を本来の姿に変えていくべきであると論じた本。翻訳に興味がある人はもちろん、外国語を教える立場にある人も読んでみる価値はある。

訳読本流の書

古き良き本格的な訳読を志向する本。やはり機械的な逐語訳ではない訳読を目指している。名文を味わいながら勉強できる今となっては貴重な1冊。

『英文解釈教室』の実践編

これだけ長い文章を訳読することを目的とする参考書はめずらしい。また巻末の「私の訳出法」は従来の一対一の当てはめ方式の訳読から脱却する糸口を与えてくれる。純粋な翻訳論ではないから中途半端な印象もあるが、一般学習者が逐語訳から抜け出す第一歩と…

訳読と意味理解

きょうは、『現代英語教育』誌の記事をレビューしながら、訳読と意味理解について考えていきます。 学力の向上による文法訳読の変容 横山(1998)は文法訳読法の概略を初級・中級・上級の3段階に分けて説明している。 初級:学習者は文法現象を見て確認するた…

コミュニケーション能力と文法学習

コミュニケーション能力 Chomsky(1965)は理想化された言語使用者の言語知識を「言語能力」(linguistic competence)と定義している。この言語能力の概念は、先に取り上げたコミュニケーションの概念と照らし合わせてみれば非現実的であることは明らかである…

学習文法論へのご案内

これまでこのブログで立て続けに学習文法論について書いてきましたが、通常の論文と違うブログという体裁であることに甘えて、内容が日を追って展開せずに前後してしまっています。 そこで今日は通しでお読みになる方のために改めてご案内させて頂きたいと思…

理論から実践へのヒントまでカバーする文法書

学習英文法をForm, Meaning, Useの3つの側面から記述し、そのうえで、学習者の誤りやすいところにも言及し、指導のヒントにまで言及しているユニークな文法書。

「発信型」から「対話型」へのパラダイムシフトを説く

「発信型」の英語教育が叫ばれるようになって久しいが、本書はさらに進んで「対話型」のパラダイムを説く。本書は必ずしも言語教育のためだけに書かれたものではないが、言語教育に携わる者であれば本書を読むことによって、従来の言語理論に対する見方が一…

「意味づけ論」の続編

コミュニカティブな言語教育が叫ばれている現在、その拠り所となる理論として注目される「意味づけ論」の続編。言語論に関してもより具体的な議論に入ってきており、学習文法を見直す視点としても有効な1冊である。

学習文法の概念②

今日は学習文法の概念の続きで、1998年11月に行ったミニレクチャーのハンドアウトの一部をアップします。 理論言語学と応用言語学の不適切な関係 応用言語学と聞くと、一般的には理論言語学の知見を一方通行的に借りてきて何かに応用する、というイメージが…

communicationalな英語教育を説く

端的に言えば、英語を勉強する必要性を創出し、その必要に応える英語教育の方法・内容はいかにあるべきかを論じた本。本書を所詮は大学の実践と割り切って読むか、小中高や企業研修、受験英語に活かせるところはないかと考えながら読むか。できれば後者の視…

学習文法の概念①

今日扱うのは、以前に書いた学習文法の考え方の理論的な背景となるものです。 馬場(1992)と伊藤・村田(1982) 文法項目(grammatical items)や文法規則(grammatical rules)の指導・学習に関わるものをカバーする概念として広義の「学習文法」がある。広義…

学習過程モデルにおける学習文法の位置づけ

従来の文法指導ではリスト化された知識の羅列として文法が扱われてきた。これはあくまでもリストであり、辞書のように引いて参照するための文法としてはよいが、学習者が学習することを考慮したもにはなっていなかった。学習を考慮に入れる場合、学習者がど…

生成論と認知論の試み

生成意味論の再評価につながるような本。 学習文法は学習者本位であるから特定の理論だけに依拠するというよりは折衷的な性格が強い。そんなときに理論研究レベルでありながら生成文法の枠組みを保持しつつ、認知意味論的視点からの分析が随所に見られるこの…

『実践コミュニケーション英文法』の文型論⑦

その他の文型 大学教科書という性質と、英語を話すためのエクササイズを盛り込むというコンセプトから、やむをえず取り上げないこととなった文型がいくつかある。 単純な動作や自然現象を表す動詞 英語の文の基本パターンは「名詞+動詞+名詞」の組み合わせ…

包括的文法書

高校生にも使えるreference grammar。ただし説明が詳しく施してあるという感じのものではない。英語教師必携かと言われると、あった方がいいかな、という本。

包括的文法書

一般学習者にもお勧めできるreference grammarである。塾や家庭教師で英語を教えている大学生にもお勧め。特に目新しい記述は見られないものの、逆にそれが「学習文法はじめの1冊」としての魅力なのかもしれない。

タイトル通りの本

正直言って、大学の英語学概論レベルの知識がないと読みこなせない気がする。特に変形生成文法の標準理論を知らない人には厳しい。しかし逆に言えば、学校文法を見直す視点として変形生成文法が有用であることを伝える本として一読の価値がある。

『実践コミュニケーション英文法』の文型論⑥

S+V+O+to不定詞 このパターンは従来の5文型ではとりあえず第5文型に組み込んでいるというのが現状であろう。すると「補語は名詞か形容詞」と定義していた教室では「この不定詞は何用法なのか」という疑問が生じてしまうし、「O=C」と説明していた…

『実践コミュニケーション英文法』の文型論⑤

「見る」「聞く」「感じる」という意味の動詞 これも典型的な日本語の動詞から導入を試みている。一応、従来から用いられている「知覚動詞」という用語も併用しているが、ここでリストアップしているsee, hear, feelなどに五感に関わる動詞は「感覚動詞」(s…

安藤文法の集大成

『英語教師の文法研究』『続・英語教師の文法研究』(大修館書店)など、この著者の英文法に関する著作は数多いが、本書が刊行された今は、もっとも包括的な本書がもっともおすすめである。このようなreference grammarは情報が豊富で説明が首尾一貫している…

『実践コミュニケーション英文法』の文型論④

きょうから少しずつ各論に入っていきます。 「与える」「伝える」という意味の動詞 このグループの動詞は「授与動詞」や「与格動詞」と呼ばれているが、学習者には馴染みのある日本語の動詞から導入する方が適切であると判断し、このような項目を設けた。田…

日本語で書かれた機能文法の概説書

従来の学校文法の知識しかない人でも読みこなせる本。 ハリデイらの機能文法の枠組みで英語の言語現象を分析している。今となってはやや古い本ではあるが、この本に書かれていることが英語教育/学習の現場に活かされているとはまだまだ言い難く、一読の必要…

『実践コミュニケーション英文法』の文型論③

「頻度」と「意味」 文型論を見直す視点として必要なのが「頻度」と「意味」である。従来の5文型では、学習者は英語では5つの文型が均等に使われているのではないかと思いこんでしまうおそれがある。このため阿部・持田(2005)では「最重要文型」として「名…

『実践コミュニケーション英文法』の文型論②

従来の文型論と意味駆動文型論との橋渡し 二重目的語をとる動詞群は伝統文法では「与格動詞」または「授与動詞」(dative verb)と呼ばれる。従来の5文型ではそれぞれの文型で用いられる動詞に対して次のような用語があてがわれていた。 S+V:「完全自動…

包括的文法書

reference grammarの本 伝統文法の枠組みに従いつつも、変形生成文法の知見も随所に盛り込まれている。一般学習者が使いこなすには難しいかもしれないが、英語教師ならば持っていて損はない1冊。

『実践コミュニケーション英文法』の文型論①

品詞論 従来の学習英文法では8つの品詞を扱うが、文法機能の面からみると動詞・名詞・形容詞・副詞の4つが特に重要であることは以前にした通りである。*1 だがこの4品詞のなかで最も重要度の高いものを選ぶとしたら、動詞と名詞であろう。このため『実践…

文型論における基本動詞の特殊性

動詞には、その意味から文型がいわば自動的に予測できるものと、それとは反対に文型から具体的な意味が確定するものとがある。後者はいわゆる基本動詞で、従来から複数の文型で用いられる動詞として知られているものである。 The invitation letter got to h…