持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

『実践コミュニケーション英文法』の文型論③

「頻度」と「意味」

文型論を見直す視点として必要なのが「頻度」と「意味」である。従来の5文型では、学習者は英語では5つの文型が均等に使われているのではないかと思いこんでしまうおそれがある。このため阿部・持田(2005)では「最重要文型」として「名詞+動詞+名詞」すなわちS+V+Oをはじめに導入した。
動詞の意味によって文型を規定していくことが「5文型」の呪縛から逃れる道であることは以前から論じているとおりであるが、S+V+Oのパターンをとる動詞は多岐にわたるため、動詞の意味から規定するやり方では煩雑になりすぎる。学習文法(pedagogical grammar)にとって分類とは言語知識を習得するための手段に過ぎない。よってこの文型をとる動詞については原則として意味による分類は行わないこととした。つまりS+V+Oをとる動詞を無標、それ以外のパターンをとる動詞を有標として、有標の動詞の意味のみに学習者に意識させることとした。

機能文法について

村田(1982)によって学校文法をHallidayの枠組みによる機能文法の視点で捉え直すことが試みられている。Hallidayのいう言語の3機能、「観念構成的機能」「対人的機能」「談話構造的機能」のうち、「対人的機能」「談話構造的機能」は積極的に盛り込んでいくべきものであるが、「観念構成的機能」については注意が必要である。
主語や目的語を格関係によって捉えることは大切なことである。阿部・持田(2005)でもS+V+Oで動詞の意味を問わないのは格関係が多岐にわたるからである。だが「格」や「意味役割」のようなものを列挙するよりも、図式構成機能によって動詞の意味から自然に格関係を感じとらせる方がよいのではないか、というのが我々の判断である。

参考文献