持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

『実践コミュニケーション英文法』の文型論①

品詞論

従来の学習英文法では8つの品詞を扱うが、文法機能の面からみると動詞・名詞・形容詞・副詞の4つが特に重要であることは以前にした通りである。*1
だがこの4品詞のなかで最も重要度の高いものを選ぶとしたら、動詞と名詞であろう。このため『実践コミュニケーション英文法』(阿部一・持田哲郎著、三修社、以下「阿部・持田(2005)」)では、最初に導入する品詞として動詞と名詞の2品詞に絞っている。

英語の最重要文型

阿部・持田(2005)では、数ある英語の文型のなかで、最も典型的なものとして、次の例文を上げている。

  • People speak English.

そして動詞の左側の名詞を「主語」、右側の名詞を「目的語」、文の中心的な働きの動詞を「述語動詞」であるという定義を図によって示している。このように述語動詞との位置関係によって主語と目的語を定義する方法は、学校文法ではまだめずらしいかもしれないが、生成文法では古くから位置関係で名詞句を規定している上(cf.安井1996)、英語の目的語に対応する日本語表現が多様であることを考えると、妥当な方法であると思われる。(日本語の格標示については吉川(1998)を参照)

  • I bought a book. 私は本を買った。
  • He entered a university. 彼は大学に入った。
  • She met her boyfriend. 彼女は彼氏と会った。
  • I like movies. 私は映画が好きです。

ここで学習者にはこの文型がS+V+Oであることは分かるようになっているが、いわゆる第3文型であることは必ずしも分かるようになっていない。大切なのは語順の習得であって、文法用語の習得ではないからである。

参考文献

  • 阿部一・持田哲郎(2005)『実践コミュニケーション英文法』三修社
  • 安井稔(1996)『改訂版英文法総覧』開拓社.
  • 吉川千鶴子(1995)『日英比較動詞の文法』くろしお出版