持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

主語と主題の観点から英文法を捉える(その2)

tough構文と主題

  1. To please John is easy.(ジョンの機嫌をとるのはやさしい)
  2. It is easy to please John.(ジョンの機嫌をとるのはやさしい)
  3. John is easy to please.(ジョンは、機嫌をとりやすい)

上は安藤(2005)に挙げられている用例で、訳文も安藤によるものである。安藤はここでもまず統語論からの説明を試みている。しかし、pleaseから対格を付与されているJohnが主語の位置へ移動すると考えると格の衝突が起きてしまうことから、生成文法の格理論では説明が付かないとしている。生成文法の枠組みでこの現象をどう扱うかについては金子(2001)に概説されているが、ここでは深入りしない。学習文法において統語論の自律性を頑なにまで保持することは賢明とは言えないからである。
この現象に関して、Swan(1995)がこれらの構文の対応関係のみを指摘しているのに対して、Quirk, et.al.(1985)はthematic frontingと称し主題化としてこの現象を扱っている。また、Biber, et.al.(1999)は、繰り上げられて主語の位置に移動した名詞句は先行する文との照応関係が成り立つことを、コーパス分析から指摘している。Biberらは上の1.のような文の頻度が低いことも指摘しているため、1.と2.とのあいだに「ジョンの機嫌をとるのはやさしい」と「やさしいのはジョンの機嫌をとることだ」のような違いがあるのかについては、ここで結論するのを控えたい。

参考文献

  • 安藤貞雄(2005)『現代英文法講義』開拓社.
  • Biber, D., Johansson, S., Leech, G., Conrad, S., and Finegan, E. (1999) Longman Grammar of Spoken and Written English. London: Longman.
  • 金子義明(2001)「tough構文」中島平三(編)『[最新]英語構文事典』大修館書店.
  • Quirk, R. et.al.(1985) A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman.

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