持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

日英対照の学習文法へ向けた諸問題(その1)

とりあえず、断片的ですが、書き留めておきます。

前置詞と後置詞

日本語と英語では語順が鏡像関係をなすということが、以前から指摘されている。この鏡像関係の中には前置詞/後置詞の対立も含まれる。

  • with a pen[前置詞+名詞]
  • ペンで[名詞+後置詞]
  • by car[前置詞+名詞]
  • 車で[名詞+後置詞]

生成文法では、このような句をPPという範疇で捉え、鏡像関係をパラメータの値の違いとして処理される。つまり、単純に、主要部(=前置詞/後置詞)が先頭か、末尾かという問題に帰着させているのだ。
しかし、学習文法においてはそう簡単にはゆかない。生成文法では「句」を内心構造をなすもののみに限定して考えるが、学習英文法では伝統文法、たとえばOnions(1971)や細江(1971)の相当語句(equivalent)のような外心構造の句も含めて考えるのが一般的である。この考え方に立つと、[前置詞+名詞]は前置詞句ではなく副詞句と分析される。英語"with a pen"が副詞句で、日本語の「ペンで」も副詞句であると考えるのは、問題なさそうである。しかし、"a pen"は名詞句であるが、「ペンが」や「ペンを」は名詞句なのだろうか。これを名詞句だと見なしてしまうと、述語と共起する[名詞+後置詞]に副詞句と名詞句があることになってしまう。

参考文献

  • 安藤貞雄(1986)『英語の論理・日本語の論理』大修館書店.
  • 細江逸記(1971)『英文法汎論』篠崎書林.
  • Onions, C. T. (1971) Modern English Syntax. London: Routledge & Kegan Paul.

英語の論理・日本語の論理

英語の論理・日本語の論理

英文法汎論―英文法統辞論提要 (1971年)

英文法汎論―英文法統辞論提要 (1971年)