持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2019年センター試験・第3問Aを読む(問1を例に)

問1

When flying across the United States, you may see giant arrows made of concrete on the ground.

文章の冒頭が疑問文になっていて、書き手が読み手に対して問題提起を行うことがある。Whenで始まる文では、Whenの直後が倒置になっていないかを確認し、倒置になっていれば疑問文と判断し、倒置になっていなければWhenが従属節を導き、副詞節になっていて後に主節が続くか、名詞節になっていてこの節自体が主語になっているかのいずれかを予測する。ここではWhen flying across the United Statesと、分詞構文が後続しているため、副詞節相当と判断する。

カンマの後にyou may seeが見えて、これが主節の主語と述語動詞であることがわかる。その目的語がarrowsである。無冠詞の複数形であるから、このarrowsについての一般的な説明を述べようとしているのではないかと考える。次のmade of concrete on the groundであるが、これを補語として主節全体をS+V+O+Cと読むのは適切とは言えない。もしこれがS+V+O+Cであれば、矢印がコンクリートで作られて設置されるまでを見届けるという意味になる。作業は長時間に亘ることが考えられ、その一部始終を空中から見るというのは考えにくい。それよりもmadeを、arrowsを修飾する形容詞用法の過去分詞と考えるべきである。こう考えると、空中から矢印を目撃する時点ですでに矢印の製造と設置が完了していることになり、より妥当な理解が可能になる。on the groundは、see(V) arrows(O) . . . on the ground(C)という形で補語になる。「矢印が地面にあるのを目にする」となる。

Although nowadays these arrows are basically places of curiosity, in the past, pilots absolutely needed them when flying from one side of the country to the other.

Although節はcuriosityまでである。in the pastの前後にカンマがあってわかりづらいが、Although節にnowadaysがあることに着目しなければならない。このnowadaysとin the pastは対比をなし、in the pastが主節全体を修飾していると考える手がかりとなる。つまり、この文ではAlthough節と主節で対比の関係になっているのである。these arrowsは前文のarrowsを指し、それが現在では基本的に興味本位で眺める場所であると述べられている。これに対して主節のin the past以降では、無冠詞複数形のpilotsが主語、「絶対的に」という意味の副詞absolutelyが述語動詞neededを修飾し、目的語であるthemすなわちthese arrowsがその後に続く。主節では矢印が興味本位で置かれているものではなく、かつては飛行機を操縦して西海岸から東海岸(あるいはその逆方向)へ移動する際に必ず参照しなければならないものであることが述べられているのである。

The arrows were seen as being so successful that some people suggested floating arrows on the Atlantic Ocean.

The arrows were seen as . . .で「その矢印は…と見なされていた」という意味になる。何と見なされていたのかというと、being so successful、つまり「それほど成功していた」と見なされていたのだという。では「それほど」とは「どれほど」だろうか。この〈程度〉を具体的に述べているのがthat節である。that節の中では、大西洋に矢印を浮かべようと提案している人がいると述べられている。some peopleは所詮少数派である。この少数意見を他の人々がどのように受け止めるかが、提案の実現に向けては重要になる。大西洋上に矢印を浮かべるということはヨーロッパとアメリカを飛行機で行き来する需要が高まっていることが考えられる。こうしたことがこの文の後でどう展開していくのかを追っていくことになる。

② Pilots used the arrows as guides on the flights between New York and San Francisco.

この文もpilotsが無冠詞複数形であり、一般的事実として述べられているものであることがわかる。このpilotsが主語でusedが述語動詞、そしてthe arrowsが目的語である。このthe arrowsは①の文のarrowsではない。①の文のarrowsは提案の域を出ておらず、実在するものではない。また、①の文のarrowsは大西洋上に存在する(はずの)ものであるが、②の文はon the flights between New York and San Franciscoが後続している。New Yorkはアメリ東海岸のとして、San Franciscoは西海岸の都市である。すなわち、between New York and San Franciscoはfrom one side of the country to the otherの言い換えである。②の文は冒頭2文と意味的に密接な関係があるが、その間で①の文が邪魔をしている。ここで本問の解答は①ではないかという考えに至る。

③ Every 16 kilometers, pilots would pass a 21-meter-long arrow that was painted bright yellow.

冒頭のEvery 16 kilometers,は副詞的な働きをする名詞で「16キロごとに」という〈位置〉を表している。主語はpilotsでやはり無冠詞複数形である。would passは述語動詞で、過去の習慣(ここでは慣習)をwouldで表している。a 21-meter-long arrow that was painted bright yellowは矢印の形状を表している。thatは関係代名詞である。この文は、②のused the arrows as guides on the flights between New York and San Franciscoを具体的に展開したものと考えられる。つまり、東海岸から西海岸へという大きな説明から、16キロごとに21メートルの黄色い矢印を見て進んでいくというやや細かな説明に展開している、と考えるわけである。こう考えると、冒頭2文と②→③という流れは明確である。

④ A rotating light in the middle and one light at each end made the arrow visible at night.

この文は、A rotating light in the middleとone light at each endという2つの主語がandで繋がっている。述語動詞はmadeで、the arrowが目的語visibleが補語になっている。at nightはvisibleを修飾している。これは③で16キロごとに設置されているという21メートルの黄色い矢印ひとつひとつの詳細な説明と位置づけることができる。こう考えると、冒頭2文と②→③→④という流れは明確になってくる。

Since 1940s, other navigation methods have been introduced and the arrows are not generally used today.

この文は、in the pastでいったん過去に遡った説明をしていたところをSince 1940という句を文頭において、現在に引き戻そうとする流れを作っている。この文の主語のother navigation methodsは、「矢印以外の誘導システム」という意味である。これが導入されてきたことが述語動詞have been introducedで示されている。andの後の後半の文は矢印が一般には使われなくなったことを述べている。

Pilots flying through mountainous areas in Montana, however, do still rely on some of them.

この文のhoweverは直前の文との逆接の関係を示している。Pilotsが主語で、do . . . relyが述語動詞である。Pilotsを修飾する現在分詞の句、flying through mountainous areas in Montanaというように、Montanaという地名がある。これはアメリカ北西部の州の名前である。これでこの文章の説明がアメリカ国内のことに終始していることがわかる。また、大西洋上に矢印を浮かべる提案について賛否が述べられている箇所もない。こうして取り除くべき文は①であると判断することができる。