学習文法の句構造規則②
「基本4品詞とその投射」
前回の語彙範疇をめぐる議論から学習文法における「基本4品詞」は次のようになる。
- 名詞
- 動詞
- 形容詞
- 副詞
生成文法の用語に従えば、この基本4品詞の投射が英語の運用における単位となる。これは田中(1993)や田中・佐藤・河原(2003)に見られる「チャンク」の概念と重なり合う。田中はコミュニケーションの最低条件とチャンクの役割について次のように述べている。
情報はかたまり(チャンク)の組み合わせによって伝えられる。だとすればチャンク構造が大幅なルール違反を犯さなければ、最低条件は守られていると言える。(田中1993: 28)
今回からのねらいは、チャンクの組み合わせと内部構造を具体的に、いわば目に見える形で学習者に示すための枠組みを明らかにすることにある。
「句」と「節」
「句」と「節」について伊藤・島岡・村田(1982)は、節が句と構造を異にするため「節」という用語を用いてはっきり区別させる必要があると述べている。伊藤らは句と節の違いを「主語+動詞」を含んでいるかどうかという点に求めている。しかしテストなどで「句か節のどちらか」などを尋ねたところで、それが英語の運用能力とは必ずしも結び付かないことは明らかである。
また、「句」の概念にも問題がある。伝統文法で「句」と呼ばれるのは外心構造を持ったものに限られている。つまり伝統文法の用語法に従えば、副詞句や形容詞句のなかには副詞や形容詞は含まれていないことになる。これに対してXバー理論に代表されるような生成文法の考え方では、「句」とはすべて内心構造を持ったものに限られる。学習文法で大事なことは、ある語群が文中でどのような働きを持つかということであるから、内心構造・外心構造にかかわらず、統一的に扱っていくことが必要である。したがって用語の上では田中らの「チャンク」のような両者を統一的に扱えるものを用い、それぞれの構造に習熟できるようさえできればよいものと思われる。