持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その17)

S+V+O+C

この文型は難しい。次の指摘も参照されたい。

第5文型はもっとも理解しにくい構文である。単純な形の文でも、目的語の次に来る補語が名詞であったり、形容詞であったりするからである。そこで、目的語の次に来る補語と目的語との関係を理解させることが大切である。*1
第5文型を導入する場合、第4文型との対比で理解させたい。この文型をとる典型的な動詞はcall, name, make, choose, keep, leaveなどであろう。*2
一般には、目的語の次に来る語が目的語を説明していれば補語で、そうでなければ(二重)目的語である、という説明でよい。補語に不定詞が来る場合は軽く触れておく程度にとどめてもよい。この型は後の段階、すなわち不定詞の項目や知覚動詞の項目でも触れざるをえないので、この段階では、個々の生徒の能力によって教える配慮が必要であろう。*3

実は、『短文で覚える英単語1900』の例文でこの文型をとる動詞は、to不定詞をとるものを除けば、keepとregardのみである。そこで、『ヴィスタ英和辞典』や『英語基本語彙辞事典』を参考にcallとmakeの例文を追加している。S+V+O+OとS+V+O+Cとの対比ということで言えば、前者がOとOの間にHAVE関係が成り立つのに対して、後者はBE関係が成り立つことを示す必要がある。大学受験のための文法指導の一環として文型を扱う場合、S+V+O+Cは「花形」として大々的に扱われがちである。しかし、中学英語レベルの語順と語形をおさらいするという趣旨で文法の授業を考えた場合、この文型の扱いはそれほど大きいものではない。この段階では他の文型を通じて英語の基本的な文構造に習熟することを優先させるべきであるというのが、私の考え方である。

教師のためのロイヤル英文法

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高校入試 短文で覚える英単語1900 (シグマベスト)

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ヴィスタ英和辞典

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英語基本語彙辞事典―3000語の背景

英語基本語彙辞事典―3000語の背景

*1:綿貫陽・淀縄光洋・ピーターセン, M. (1994)『教師のためのロイヤル英文法』旺文社, p. 15.

*2:綿貫他前掲書, p. 15.

*3:綿貫他前掲書, p. 15.