持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

『ゆっくりとしっかり学ぶ英文法』改訂版のこと

はじめに

2021年2月にリリースした『ゆっくりとしっかり学ぶ英文法』を、2022年4月に改訂版として改めてリリースいたしました。
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このブログでは、指導者や上級学習者向けに、どこをどのように改訂したのかを書き綴っていきます。

章立ての変更

全22章から全25章へ

旧版では「英語力を確実に高める22章」という副題にも示したとおりで、全22章で構成されていました。それが改訂版では3章追加して全25章となりました。これに伴い、副題も「英語力を確実に高める25章」に改めています。ページ数も当然増加しており、旧版が280ページであったところ、改訂版では349ページと、約70ページ増えています。このページ増の背景には、葛藤がありました。それは「ことばを尽くして解説して、ページ数が増えることが、はたして学習者の利益になるのだろうか」という迷いです。この迷いを払拭してくれたのが、薬袋善郎先生の新著でした。

この本が全471ページあります。理屈で納得しながら学んでいきたい学習者という想定する読者層も重なる薬袋先生のご著書でこれだけの紙幅を割いているのであれば、拙著もそれでいこうと思うようになりました。

「文の種類」の居心地の悪さ

旧版には第11章に「文の種類」という項目を置いていました。ここに昔から中学校の教科書で扱ってきたような基本語順と、大学入試の文法問題で出てくるような否定現象などが同居していました。これでいくと、第10章までの例文で疑問文や否定文などが扱えないという制約が生じます。旧版ではその制約のなかで解説してきたのですが、改訂版では旧来からの「中学レベル」に相当する否定文・疑問文などを第3章に移動させました。これにより、冒頭3章で英語の基本となる語順と語形をしっかり扱い、その上で第4章以降の文型の解説へとつないでいくことができるようになりました。一方、否定の細かな問題については第24章に独立させました。

「その他の文型」というガラクタ箱

旧版の第10章は「動詞と文型(その4)」というタイトルを付けていました。ここにはS+V+O+CのCに準動詞がくるパターンからthere構文、seemなどの動詞、そして形容詞の語法などが入っていました。改訂版ではここを3つの章に分割しました。S+V+O+CのCに準動詞が用いられるものを第11章「動詞と文型(その4)」とし、these構文やseemなどを続く第12章「動詞と文型(その5)」としました。そして形容詞の語法は第13章「形容詞と文型」という独立章といたしました。このあたりは中村捷先生のご著書が参考になりました。

中村先生とは数年前にある学会の懇親会で直接お話をする機会を得まして、そのときにいろいろと励まされたことが印象に残っています。その際に口頭で伺ったことも、改訂版では反映されています。

章の中の拡充

beを用いた文の扱い

章の中のことでは、beを用いた文を第1章にいったんまとめていることも、今回の改訂のポイントとして上げることができます。旧版ではbeを用いた文を理詰めで納得してもらうことに重点を置いて「be+形容詞」を第2章、「be+名詞」を第3章と分散させて小出しにしていました。これはこれで改訂版でも残しつつ、第1章で、日本語の非動詞文が表す意味を英語で表すのにbeが必要であることを提示するようにしました。

名詞句の詳細

改訂版では名詞句の扱いを拡充しています。第1章で可算・不可算について加筆し、冠詞類の扱いも充実させました。第2章では冠詞類以外の限定詞にも、言及し、特に数量詞の扱いを強化しています。第1章、第2章で導入した限定詞や副詞をベースにすることで、第24章で否定をより深く扱うことが可能になっています。

文構造の図示の充実

文型の章を中心に、文のしくみを図で理解したり、パターンで覚えやすくするように心がけました。『ゆっくりとしっかり学ぶ英文法』は理詰めの理詰めの文法解説書ではありますが、パターンと規則を順番に覚えていくという読み方も可能になっています。

たかが改訂、されど改訂です。70ページ増は伊達ではないと自負しております。多くの学習者(決してすべてではありません)にお役に立てるものと確信しております。