文の長さ(その2)
いろいろな「長さ」
文は短い方が読みやすいが、長ければ長いほど読みにくくなるのかというと、そう単純な比例関係をなすようでもなさそうである。樺島(1967)では次の2つの文の読みにくさについて検討している。
- おじさんからおみやげに童話の本をもらったが、私は童話の本を一晩で読んでしまった。
- わたしはおじさんからおみやげにもらった童話の本を一晩で読んでしまった。
樺島は、この2つの文のうち、2.の方が文の構造が複雑であるため読みにくいと指摘している。樺島(1980)ではこうした構造の文だけでなく、修飾語を多く持つ文が一般的に読みにくいと指摘している。この読みにくさは日本語の語順に起因するものとされている。亀井(1994)は、英文が複文を多用する立体構造をなすのに対して、日本文は重文を多用する平面構造をなすという。亀井は、その理由を日英語における動詞の位置の違いに求めている。つまり、動詞が主語の直後に現れる英語と異なり、日本語では動詞が文末に現れるため、主語と動詞の間に多くの語句があると読みにくくなると言うのだ。
日英語の語順の違いと読みにくさの関係
こうなると、日英語の語順の違いを、鏡像関係だのパラメータだのというだけでは、学習文法としては不十分であるということになる。例えば、上に示した2.のような構造の文は日本語としては読みにくい。しかし、英語では名詞修飾の節は後置修飾であるため、学習文法では川村(1994)が言うような「情報追加プロセッサー」として捉え直すこともできる。語順が違えば、書くときの配慮や読むときの注意点が違ってくるのだということを学習者に気づかせることも文法指導には必要であろう。