持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

いわゆる「特殊構文」

受験英語の象徴的な存在の一つに「特殊構文」がある。no more thanやtoo ... to doなどのパターンを扱うものである。こうした構文の和訳問題や整序問題は今でも一部の塾や予備校で行われているようである。
このような「特殊構文」は入試で出るから仕方なくやるのだという「必要悪」と考えられがちであるが、最近の入試の文法問題を見る限りでは必ずしも頻出項目とは言い難い。入試文法問題の多くが時制などの述語動詞の形態と意味に関するものや、不定詞などの準動詞の形態と意味に関わるもの、つまり動詞の文法なのだ。
「特殊構文」が分からないと、高度な文章が読めないという主張もある。だがこれもさほど頻度の高い表現とは言えない。文章の内容が高度であろうが関与する文法知識に大差はない。文法的に難しい文と言ってもそれは基本的な文法規則が繰り返し適用されて長くなっているだけであることが多く、特殊構文が分かるかどうかとは別の次元の問題である。
ではなぜ、いまだに特殊構文に固執する人たちがいるのだろうか。それは教えやすいからである。「構文」というかたちで言語知識をパッケージ化することで、教師は説明しなくてもすむので、あとはひたすら「覚えろ、覚えろ」とかけ声だけかけていればすむのだ。
言語知識はただ頭に入れればいいというものではなく、実際に言語活動で使えることが重要である。構文の暗記では知識を獲得してもその知識を活性化させて実際に使えるようになるのに時間がかかるし、そもそも使用頻度の低い知識を寄せ集めて暗記すること自体意味がない。
悲しいかな、ここにこういうこと書いても、ここで批判されているような教師には読んでもらえないだろう。なぜならば彼らは自分のしていることが時代錯誤で非効率的であることに気付かないくらい情報に疎いのだから・・・