文章における論理とは何か(その1)
説得のための文章
文章の目的の1つに、読み手を説得させることがある。読み手を説得させる文章は「論説文」や「論証文」と呼ばれる。論説文とは「ある問題について、主張を、論証的・解説的に述べ、相手を説得しようとする文章」(大熊1973b)であり、論証文とは「ある問題について、自分の意見を提出し、その正しさを論理的に証明し、その正しさを信じさせることを目的とする文章」(大熊1973a)である。このなかでも大熊(1973a)は、論理性をかなり重視した文章のあり方について述べている。
大熊(1973a)は、よい論証文の条件として次の4点を挙げている。
- 主張と証明の2部分がある。
- 主張は明確・妥当である。
- 証明は論理的に正しい。
- 構成・用語も適切である。
主張を明確にするには、主張を短く理解しやすい文で表す必要がある。論理的に正しい証明とするには、証明の部分が信頼性の高い論拠でなければならない。また、論証の仕方、つまり論理付けが正しいものでなければならない。そのためには、正しい論証の方法と、論証が誤っているときにそれを発見する方法を知っておかなければならない。
大熊(1973a)によると、論証の方法には、帰納的推論、演繹的推論、類推法の3つがあるという。このうち、帰納的推論は、個々の具体的な事実を検証した後、概括して結論を引き出す方法である。大熊は、帰納的推論では不完全な証拠・事実から軽率に概括してしまいがちであるという問題がある。これに対して、演繹的推論は真理と認められる概括を、他の事実に当てはめて1つの結論に至る論証法である。演繹的推論では三段論法が用いられることが多いが、三段論法は論理の面からは非常に誤りやすい。このため、大前提が正しいものであるのと同時に小前提が正しくなければならない。また、論証に誤りがある場合は、前提の内容がどんなに妥当・適切であっても意味をなさなくなる。