持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

辞書と教材研究のこと

『岩波英和大辞典』

世の中ネットで本を買う時代のようである。都内在住であっても、メトロと都営*1を乗り継ぐ高い運賃を払って神保町に行くより、涼しい部屋でマウスと戯れているほうが快適ではある。しかし、低価格の古書の場合、書き込みや傷みがどの程度あるのかは自分の手に取ってみないと納得できないことも多い。今回買った『岩波英和大辞典』もそうした古書の1つである。購入価格は800円、略語表のところに何かを剥がした跡があるものの、あとは問題なしだった。
それにしても、おもしろい辞書である。本文の前に英語の歴史や辞書の役割を概説するページがあったりする。語義の配列は厳密に歴史的な岩波英和と比べると折衷的で物足りなさを感じる向きもあるのかもしれない。しかし、talkの語義の筆頭に「(人と)語り合う」を挙げていたのには、さすがだなと思った。一方、speakのほうには「ものを言う、口をきく、話す」という3つの訳語を冒頭の語義に据えている。コアだネットワークだということが声高に叫ばれるずっと前に、両者の意味の差をひとことで明快に示しているのだ。はしがきに「ことばの辞典」を目指したと書いてあるが、ことばの辞典として抜群の切れ味を持っていると感じた。

来るべき多忙に備えて

今年非常勤講師として勤務している学校に着任したとき、別の仕事が忙しく、十分な教材研究ができていなかった。それでもそれなりに生徒に受け入れられたのは奇跡なのか、それともそれまでの授業がよほどあれだったのか*2。今後はそういう事態に陥らないようにということで、教材研究を進めている。授業で使うプリントもある程度できている。生徒のレベルと、生徒が求めているものが分かってくると、テキストをどう使っていけばよいのかが見えてくる。ただし、拠り所になる理論は単一であっても、実際の授業のありようは多様である。準備が万端でも頓挫する授業もあるのだ。

*1:うちの場合

*2:あれって何ですかって聞くことを、最近の言葉ではKYと言う。